最新記事

中国

中国建国70周年へのアメリカの姿勢と香港人権・民主主義法案

2019年9月30日(月)16時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

アメリカは米中国交正常化の時も、「中華民国」との断交を北京政府から強要されたため、やむなく断交と同時に国内法で「台湾関係法」を制定している。

同じように香港がイギリスから中国に返還されると同時に(1997年7月1日)、国内法として「米国・香港政策法」を制定した。香港が「一国二制度」の下で中国に返還されたのちも、本当に「二制度」により「民主や自由や香港の自治」が守られているなら、これまで通り通商や投資においてアメリカの対香港優遇措置を続けるとしている。

こういった政策は1980年代半ばから香港返還までの間に、米英間で討議されてきたもので、だからこそ最高裁判所の裁判官に裁判長以外は、外国籍を認めると、香港基本法で謳っているのである(参照:9月24日付コラム<香港最高裁・裁判官17人中15人が外国人――逃亡犯条例改正案最大の原因>)。

それが破られるなら、当然のことながら返還時に約束した対香港優遇措置は認められなくなるので、アメリカ政府は「香港の自治が守られているか否か」を監督し、米議会に報告する義務があるというのが米議会の主張だ。

それだけではない。「法案」では行政長官や立法会議員(国会議員に相当)を選ぶ権利を香港市民に与え、「一人一票」の原則を守れということにまで踏み込んでいる。

中国政府が激怒しないはずがないだろう。これは2014年の雨傘運動において決着が付いたことであり、香港を司る、中国の最高立法機関である全人代(全国人民代表大会)常務委員会で決議した事項に抵触すると、中国政府はアメリカを糾弾している。

こうして、CCTVは「法案」に対して、「内政干渉だ!」と激しい抗議を繰り返しているわけだ。

米中貿易戦最前線に対する中国政府の回避策

この「法案」は米中貿易戦争を反映したもので、「法案」をテコに米中貿易交渉への威嚇を強めようというアメリカの意図は明らかだ。

ところが、それを先読みしている中国は、広東・香港・マカオ(澳門)をつなげた「粤港澳大湾区経済構想」(ビッグベイエリア経済構想)を構築し、深センを社会主義先行モデル区に再指定した。これに関しては8月20日付のコラム、<「こっちの水は甘いぞ!」――深センモデル地区再指定により香港懐柔>に書いたが、習近平政権は「中国の金融センターを、香港から深センに移そうとしている」のである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中