中国、SNS総動員で香港デモ批判を世界に拡散 効果について疑問の声も
中国がSNSやメディアを使い、香港のデモに対する批判を世界に拡散させようとしている。写真は香港の地下鉄構内に集まったデモ参加者。8月21日、元朗地区で撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)
上海に住む17歳の高校生ワン・インさんはこの4年、韓国の人気男性歌手グループ「EXO」の中国人メンバーを熱烈に応援してきた。そして最近、このメンバーの影響で、香港の抗議デモに反対する中国の立場を支持する「愛国者」を自任するようになった。
ここ数週間、ワンさんのような中国市民がインスタグラムやツイッターといった西側のソーシャルメディアに殺到し、「逃亡犯条例」改正をきっかけに始まった香港のデモに批判を浴びせてきた。
中国の視点から見た香港の状況を、海外に広く知らしめようという共産党政府の積極的な宣伝工作の一環で、国有メディアと中国の有名人、当局からお墨付きをもらった国内のネットユーザーが一体となって進めている。
ロシアに比べてあか抜けない
香港のデモの様子が中国国内で報道されたり、抗議活動の映像が流れることは、少し前までほとんどなかった。しかし、今では連日ニュースの主役の座を占め、ミニブログの「微博(ウェイボ)」では、最も多く閲覧された話題になるなど、状況は一変している。そこでは中国市民に対し、「香港に抗議しよう」と呼び掛けが行われている。
国有メディアは、香港の抗議活動を西側勢力や過激派に操られた「テロリスト」の仕業とみなすような記事や映像を、国内外にこれでもかと配信。ツイッターやフェイスブック(FB)などに香港デモを批判する有料広告を出した。
こうした政治宣伝についてツイッターやFBは20日、中国政府が使っていた大量の偽アカウントを閉鎖したと明らかにした。
中国本土では通常、ネットの使用が厳しく管理されている。ところがきわめて異例の措置として、香港デモを批判する場合は海外にもメッセージを拡散することを許されているもようだ。
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)で中国のソーシャルメディアを研究するファーガス・ライアン氏は、「極めて愛国的な人々のみが自由な書き込みを許されており、コンテンツは検閲されない」と指摘。彼らは(デモを批判する)キャンペーンを実行し、オンラインを組織化できる。それが中国のネット規制システムの中で起こり、より幅広いネット世界に拡散している」と述べた。