最新記事

格差

女性非正規の半分がワーキング・プアという、令和日本の悲惨な実態

2019年7月24日(水)16時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

週35~44時間働く女性に年収をたずねてみると、有業者の下位25%未満という回答は、アメリカやスウェーデンでは数パーセントしかいない(OECD「PIAAC 2012」)。日本のように、普通に働いても女性の大半がワーキング・プアという社会はあまりない。女性は男性に養われるべしという考えが強いことが理由だろうが、その考えは時代にそぐわなくなっている。未婚率、離婚率の高まりで、自身の稼ぎで生計を立てている女性は増えている。

正社員になれればいいが、雇用の非正規化でそれも容易ではない。となると、<図2>の右側のような蟻地獄でもがき苦しむことになる。メディアで報じられる母子世帯の悲惨な生活実態は、その可視化に他ならない。

<図2>のデータは、独身者と既婚者が混ざったものだが、夫のいない未婚の非正規女性の所得も出せる。老後が見え始めているアラフィフ年代(45~54歳)に注目する。<表1>は、47都道府県の中央値(median)を高い順に並べたものだ。

mai190724-chart03.jpg

全県がワーキング・プア一色となっている。単身では生活が厳しいと思われるが、これで暮らしている人もおり、子を養っているシングルマザーもいる。

未婚者なので就業調整しているとは考えられない。独り身を養うべく、フルタイム労働をしている女性が大半だろう。しかし対価はこの有様。老後のことなど考えたくもないはずだ(その時間もないかもしれない)。普通に働けば普通の暮らしが得られる。この原則に照らせば、上表の実態は違法とも言えるレベルだ。

AIの台頭により,人間が労働から解放される時代が来ると言われている。それはまだ先だろうが、1日8時間の普通の労働で事足りる時代はすぐそこまで来ているはずだ。AIとBI(ベーシックインカム)の組み合わせで、普通の労働で普通の暮らしができる社会の実現が望まれる。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中