最新記事

イラン核問題

ウラン貯蔵量上限超えたイラン 国連制裁再開に必要な6つの手続きとは

2019年7月3日(水)17時15分

7月1日、国営イラン通信によると、イランのザリフ外相は、低濃縮ウランの貯蔵量が核合意で定めた上限を超えたと明らかにした。写真はIAEA本部前で3月撮影(2019年 ロイター/Leonhard Foeger)

国営イラン通信によると、イランのザリフ外相は1日、低濃縮ウランの貯蔵量が核合意で定めた上限を超えたと明らかにした。国際原子力機関(IAEA)も上限超えを確認した。

例えば欧州側の合意参加国である英国、フランス、ドイツのいずれかが、イランが合意内容に違反したと確信する場合、紛争解決手続きを発動することができる。この紛争解決手続きにより、最短65日以内で国連の対イラン制裁が再開される可能性がある。紛争解決手続きの概略は以下の通り。

合同委員会での手続き

◎ステップ1

核合意のいずれかの当事国が、他の当事国が合意に違反したと確信する場合、合同委員会に問題解決を付託することができる。合同委員会の現在のメンバーはイラン、ロシア、中国、ドイツ、フランス、英国、欧州連合(EU)。米国は以前はメンバーだったが離脱した。

合同委員会は、期間の延長について総意による合意がなければ、15日以内で問題を解決する。

◎ステップ2

いずれかの当事国がステップ1の手続きで問題が解決しないと確信する場合、外相レベルに問題解決を付託できる。外相たちは、期間の延長について総意による合意がなければ、15日以内で問題を解決する。

合意の不履行があったと申し立てる国もしくは申し立てられた国は、外相による協議と並行する形か、これに代わるものとして、3カ国から成る勧告委員会に問題解決を付託することができる。3者のうち2人は紛争当事国がそれぞれ任命、残り1人は中立的な立場からとする。

勧告委員会は15日以内に意見を提出しなければならないが、この意見に拘束力はない。

◎ステップ3

当初の30日間で問題が解決しない場合、合同委員会は勧告委員会の上記の意見を5日以内に検討する。

◎ステップ4

ここまでの手続きを経ても納得せず、重大な不履行があると考える国は、紛争の未解決を理由に、自国の核合意履行を停止することができる。国連安全保障理事会に重大な不履行の状況を通告することもできる。

安保理での手続き

◎ステップ5

不履行を申し立てる国から通告を受けた安保理は、30日以内に対イラン制裁解除の継続について、決議に掛けなければならない。決議には9カ国の賛成が必要で、かつ、米国、ロシア、中国、英語、フランスの常任理事国による拒否権の発動が1票でもあってはならない。

◎ステップ6

30日以内に安保理で決議が承認されず、安保理が他の決定をしない場合、以前の国連決議に基づくすべての対イラン制裁が再開される。

[1日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物続伸、ウクライナ紛争激化で需給逼迫を意識

ビジネス

午前の日経平均は反発、ハイテク株に買い戻し 一時4

ワールド

米下院に政府効率化小委設置、共和党強硬派グリーン氏

ワールド

スターリンク補助金復活、可能性乏しい=FCC次期委
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中