日産株主総会でルノーが「棄権」? 新体制が抱える妥協人事のリスク
利益相反事案、ルノー出身取締役は決議参加せず
日産の指名委員会等設置会社への移行は、外部有識者による「ガバナンス改善特別委員会(以下、特別委)」の提言を受けて実施する。カルロス・ゴーン前会長の不正事件を受け、日産が前会長に権限が集中していた統治体制を改める必要があると判断し、特別委に統治改革案の策定を依頼した。
特別委の提言では、独立した社外取締役を、報酬委員会の委員は「全員」とし、指名と監査の両委員会の委員は「過半数」(指名委は全員がより望ましい)としている。
また、日産の主要株主で取締役などの役職経験者が「監査委員会の委員に就任することは望ましくない」とも提言している。ボロレCEOの起用はこの提言にやや抵触する譲歩を強いられた。
一方、両社の交渉に詳しい関係者によると、日産の取締役会でルノーと利益相反の恐れがある事案を扱う場合は、ルノー出身の取締役は決議に参加しないことを両社は合意しているという。紆余曲折はあったものの、最終的には「両社にとって喜ばしい、良い合意になった」と同関係者はみている。
取締役選任11人の議案では、西川社長の経営責任を問う株主の声も多く、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスも西川社長の再任には反対を推奨した。
ルノー側も「日産に配慮した経営統合案に反対する西川社長の続投は不条理だ」(ルノー関係者)としてぎりぎりまで不満をみせていたが、最終的に取締役会で全会一致で続投が決まり、株主総会でも承認される見通しだ。
提携関係を約20年続ける日産とルノーはすでに事業上の結びつきが強く「別れる」選択肢は両社とも想定していない。日産への影響力を維持し続けたいルノー。ルノーへの出資が15%に過ぎず議決権もないため、対等な資本関係に見直したい日産。今回の人事を巡る攻防で溝が深まった両社は再び歩み寄れるのか。新体制下でも両社の神経戦は続きそうだ。
白木真紀、Linda Sieg 取材協力:田実直美 編集:田巻一彦
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