最新記事

水危機

200人以上死亡の熱波につづき、インドの水不足が深刻

2019年6月24日(月)18時30分
松岡由希子

インドのチェンナイでは貯水池すべてがほぼ干上がっている P. Ravikumar-REUTERS

<5月末から記録的な熱波が続くインドで、今度は水不足が深刻な問題となっている......>

昨年の南アフリカにつづき、今年はインドで深刻な水不足に

2018年1月、南アフリカ共和国のケープタウンでは、記録的な干ばつに伴って水不足となったことから、3ヶ月後の4月12日を「デイ・ゼロ」と称し、その日以降、水道水の供給を停止し、市民には給水所を通じて生活用水を提供すると発表した。その後、市民による節水活動などが奏功し、「デイ・ゼロ」は免れたが、世界的に都市居住者が増加するなか、都市部での水不足について警鐘を鳴らす事象としても注目された。

2019年6月現在、インドも同様の危機的状況に陥っている。慢性的な干ばつに加え、2019年5月末から続く記録的な熱波が続いている。6月18日にも、ニューデリーで6月では過去最高の48度を記録し、これまでに200人が死亡している。

インド南東部チェンナイでは、4カ所の貯水池すべてがほぼ干上がっている

こうした影響で人口約465万人を擁するインド南東部の都市チェンナイでは、4カ所の貯水池すべてがほぼ干上がり、チェンナイ都市圏上下水道公社(CMWSSB)が水供給量を約40%削減する措置を講じた。

公営水道を利用する60万5千世帯では世帯あたり1日120リットルが供給されてきたが、この措置により水供給量が1日70リットルにまで減らされている


このような深刻な水不足は、市民の日常生活や経済活動に大きな影響を及ぼしている。ロイターの報道によると、私設の給水ポンプには生活用水を求める市民が長時間にわたって列をなし、多くのホテルや飲食店が臨時休業しているほか、企業のオフィスでも食堂やトイレでの水の使用が制限されているという。

インド国内の21都市で地下水が枯渇し、1億人以上に影響が出る

水不足は、チェンナイにとどまらず、インド全土で懸念されている。インドでは、集水システムが十分に整備されておらず、地下水に依存している地域が多い。長年、地下水源を得るために地面を掘削し続けてきた結果、地下水の枯渇も深刻だ。

インドで水不足の解消に取り組む非営利団体「FORCE」の代表ジョティ・シャーマ氏は、米テレビ局CNNの取材に対して「インド政府は、国民が水を確保できるよう懸命に取り組んでいるが、地下水源が枯渇するスピードは年々速くなっている」と述べている。

インドの行政委員会(NITI Aayog)が2018年6月に水資源省らと共同で策定した報告書によると、インドでは、高度または極度の「水ストレス」に6億人が直面している。

この報告書では「2020年までに、デリーやバンガロールを含むインド国内の21都市で地下水が枯渇し、1億人以上に影響が出る」とし、「2030年までに水の需要量は供給量の2倍となる。多くの国民にとって水不足はさらに深刻となり、インドの国内総生産(GDP)の6%程度のマイナス影響が見込まれる」との予測を示している。シャーマ氏は「降雨量の変化に適応した貯水をしなければ、都市であれ、村落であれ、インド全土で水不足がより深刻になるだろう」と警告している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ氏の自動車関税、支持基盤の労働者

ビジネス

2025年度以降も現在の基本ポートフォリオ継続、国

ビジネス

TSMC、台湾で事業拡大継続 新工場は7000人の

ビジネス

午後3時のドルは149円付近に下落、米関税警戒続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中