仏ルノー、FCAと経営統合に意欲 日産はグループ内で蚊帳の外?
日産の地位低下
FCAとルノーの経営統合案では、両社の既存株主が50%ずつを保有する持ち株会社を設立する。FCAの登記上の本社所在地はオランダ。FCAの提案では、ルノーとの経営統合が実現すると、新たな持ち株会社の本社もオランダに置く計画だ。
現在の日産のルノーへの出資比率は15%。フランスの法令上、議決権はない。FCAとルノーが統合すれば、日産の出資比率は7.5%に半減するが、新会社の本社がオランダに置かれるため、フランスの法令の効力が及ばず、日産には新たに議決権が発生する。
持ち株会社には日産からも取締役1人が就任する見込みだが、持ち株会社の会長にはFCAのジョン・エルカン会長が就任し、ルノーのスナール会長がCEOに就く予定だ。
日産はこれまで販売規模(約551万台)と業績でグループでの存在感を示してきたが、業績は悪化の一途。FCA(約484万台)が加われば、グループの販売台数は1500万台超と世界首位になる。4社はあらゆる面で「規模の経済」を享受できるが、持ち株会社での力関係なども考慮すると、「日産の立場と影響力はFCAよりも弱くなる」と、自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは指摘する。
日産のスポーツ多目的車(SUV)がFCAのジープ・ブランド「チェロキー」と競合するなど、北米におけるトラック系市場でFCAと日産のモデルが競合していることもネックだ。
こうした課題が生じるにもかかわらず、ルノーがFCAとの経営統合案を前向きに検討するということは「ルノーは必ずしも日産と運命共同体である必要はないという強いシグナルを送っている」――。ある自動車業界アナリストは、こうした見方も示している。
FCA・ルノーの統合交渉では、ルノーの経営陣に近い関係筋は、日産は経営の自律性をあきらめて規模を取るか、規模をあきらめて自律性を維持するかの選択を余儀なくされるかもしれない、と話している。
白木真紀、田実直美 in Tokyo、白水紀彦 in Beijing、Laurence Frost in Paris、Giulio Piovaccari in Milan, Joe White in Detroit 編集:田巻一彦
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