役人と企業に富、人民には飢えを 中国×ベネズエラ事業「負の遺産」
今回、以下の事実が初めて明らかになった。
●CAMCは、少なくとも5つの農業プロジェクト、総事業費30億ドルを建設すると約束したが、完成させなかった。
●ロイターが確認した契約書類や事業計画書によると、同社は、問題となった2億ドルのコメプロジェクト契約のうち、少なくとも半分の額を受け取ったほか、その他の4つのプロジェクトについても契約額の少なくとも4割を受け取った。受領総額は少なくとも計14億ドルだが、事業は完成しなかった。
●CAMCは、仲介者に1億ドル以上を支払った。検察側は、これがベネズエラとの契約を進めるためのキックバックだったとしている。
CAMCやその幹部は、起訴されていない。
北京に本社があるCAMCはロイターに対し、起訴された内容には「多数の不正確な点」が含まれるとしたが、詳細な説明は避けた。
中国外務省はロイターに宛てた声明で、ベネズエラにおける中国企業による贈賄容疑についての「報道」は、「明らかに事実を捻じ曲げて誇張したもので、隠れた動機に基づいている」と述べた。
ベネズエラ政府の広報を担当する通信情報省、そして問題となった契約の多くに絡むPDVSAは、コメントの求めに応じなかった。
チャベス氏が築き、マドゥロ氏が現在率いる左派政権は、最大の脅威に直面している。西側民主国家の多くの支援を受ける野党側は、マドゥロ氏が再選を果たした昨年の選挙は非合法だったと主張し、野党指導者のフアン・グアイド氏が正当な指導者だとしている。
ベネズエラの政治危機は、ハイパーインフレーションや大量の失業、そして失望した市民の国外脱出による経済崩壊が引き金となった。ベネズエラ人は、慢性的な食糧や電力、水の不足に悩まされている。これらは、デルタアマクロ州で描かれたようなプロジェクトによって改善されるべき基本的ニーズだ。
深刻な物資不足とプロジェクトの失敗は、かつて豊かだったこの国と3000万の国民が、腐敗と縁故資本主義によって、いかに貧困に突き落とされたかを浮き彫りにしていると野党側は主張する。
マドゥロ大統領は2017年の演説で、石油から、住宅、電気通信部門まで、中国企業との間で790件のプロジェクトが契約されたと述べた。このうち、495件が完成済みという。プロジェクトの事情に詳しい複数の人物によると、一部の事業は賄賂が原因で頓挫し、その他は監視や能力の不足で計画が狂ったと話す。
デルタアマクロ州では、政府の当局者までもが、両方の原因が相まってコメプロジェクトがだめになったと話す。
「政府がこの計画を放棄した」と、CAMCと連携した政府の地方開発担当部門で州コーディネーターを務めるビクトル・メサ氏は言う。 「全てが失われた。全てが盗まれた」
機密性の高い銀行関連法により長年租税回避地となってきたアンドラの検察当局は、国内の金融セクターを浄化する一環としてベネズエラがらみのマネーロンダリング疑惑捜査を始めた。
起訴状によると、ベネズエラ関係者は、アンゴラの銀行バンカ・プリバダ・ダンドラ(BPA)を通じて資金を受け取っていた。