米中交渉決裂、追い込まれた習近平
Just Like Trump, Xi Can’t Afford to Cave
5月11日付の人民日報の論説は、「貿易交渉の合意文書は、中国人民に受け入れられるものであると同時に、中国の主権と尊厳を損なわない文言でなければならない」と述べた。
これが、対米貿易交渉において、中国側が政治的な配慮からどうしても譲れない点だ。だが重要なのはそれだけではない。習は、トランプの関税引き上げによる締め付けに、自国経済がどれだけ耐えられるか、慎重に見極めなければならない。
燃える愛国キャンペーン
中国の経済成長は近年大幅に減速したものの、新たな景気刺激策が一定の効果を上げているようにみえる。ただ、無視できないのは債務の膨張だ。債務残高の対GDP比はこの10年で急増、景気対策が増加に拍車をかけている。中国経済の輸出依存度は10年前と比べ低下したとはいえ、輸出頼みは相変わらずだ。アメリカからの制裁関税の影響で、繊維や靴などの製造工場はベトナムなど低賃金の労働力がある国に次々に移転した。もしもトランプが脅し文句どおり、これまで課税対象から除外してきた3250億ドル相当の中国製品にも25%の関税をかけたら、この流れは加速するだろう。
つまり、習は何らかの形で取引に応じざるを得ない。だが最終的にどんな合意がまとまるにせよ、「アメリカの要求に従って、中国は法律を改正する」という文言が盛り込まれることはあり得ない。そのために中国の国営メディアは今、愛国カードを強力に振りかざしており、こうしたキャンペーンは今後数週間続きそうだ。
「5000年間の風雨に耐えてきた中華民族は、どんな事態に遭遇しようが決して怯まない」中国の国営テレビ・中国中央電視台(CCTV)のニュースキャスターはそう言い放った。
※5月21日号(5月14日発売)は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。軍出身者が作り上げた世界最強の5G通信企業ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)。アメリカが支配する情報網は中国に乗っ取られるのか。各国が5Gで「中国製造」を拒否できない本当の理由とは――。米中貿易戦争の分析と合わせてお読みください。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら