ブレグジットを迷走させる、離脱強硬派の「メイ降ろし」と愚かな誤算
Brexiteers Never Wanted Brexit To Begin With
メイの側近らは、政権が5月28日まで持てば、一定の成功を収めた首相として歴史に名を残せると考えているようだ。この日を過ぎれば、労働党の最後の首相ゴードン・ブラウンの任期を超えることができるからだ。
しかしそこに至るまで、とりわけ今後2~3週間は、メイが政権を維持するのは非常に難しくなるだろう。ERGの中心的存在であるボリス・ジョンソン前外相は、首相の座を誰よりも虎視眈々と狙ってきた。ジョンソンは12日、メイの離脱案を厳しく批判して「メイ降ろし」に力を入れることこそが、後継者争いに勝利するカギだと考えていることを露呈した。
一方、こうした党内の権力争いに興味のない議員たちは、メイのやり方に純粋に政治的な疑問を感じている。
ブレグジットはEUに残留するか離脱するかという、比較的単純な白黒の問題であるにもかかわらず、メイは離脱にも「ハードブレグジット」と「ソフトブレグジット」があるとして、灰色の領域をつくり出した。そして党内の離脱強硬派につぶされると分かっているのに、ソフトブレグジットを推してきた。
さらにメイは単独プレーを好み、EUとの交渉にも1人で乗り込み、閣僚たちを遠ざけ、党内の一般議員を無視してきた。だから彼女は、自分がまとめてきた離脱案によって、イギリスは間違いなくEUから「解放される」ことを党内に説得できなかったのだ。
今やメイの支持率は30%以下に落ち込み、与党内の議員にとって、彼女への支持を表明することは自らの政治生命を危うくしかねなくなった。だから、メイ自身ブレグジットを支持しており、ブレグジットを成功させることに首相の座と名声が懸かっているにもかかわらず、ブレグジット支持者の間で彼女は正当性を失ってしまった。
実際、メイに対する非難(主にアイルランド国境問題に関する不十分な説明が原因だ)は極めて激しくなり、保守党内でさえ、彼女がまとめた離脱案に賛成票を投じることは、真のブレグジットに反対していると受け止められるようになった。
繰り返される読み間違い
だが、離脱強硬派が意図せずブレグジットを失敗させつつあるもう1つの、そしておそらく最も際立った理由は、単純な(しかし深刻な)政局の読み違いだ。実のところイギリスの政治は過去3年間、同じような愚かな誤算に振り回されてきた。
デービッド・キャメロン前首相が、国民はEU残留を選ぶに違いないと根拠のない自信を抱いたために、16年の国民投票が実施されることになった。そして17年には、保守党は地滑り的な勝利を収めるに違いないと、メイが奇妙な確信を抱いたために、解散・総選挙が行われた。結果的に保守党は労働党に30以上の議席を奪われ、議会における圧倒的過半数を手放した。