「韓国にまともな民主主義はない」アメリカも抱く誤った韓国観
AN ALLY, NOT A PUPPET
ワシントンには、冷戦の最中、1970年代の韓国の政治状況が今も続いていると思い込んでいるアナリストがあまりに多い。彼らに言わせれば、韓国にはまともに機能する民主主義は存在せず、ただ右と左の独裁政権の交代があるだけだ。右派の独裁政権は(腐敗に目をつぶってでも)アメリカが庇護すべきだが、左派の独裁政権は北の共産主義者にすぐにでも国を売り渡しかねないから要注意だ――彼らはそう考えている。
ワシントンでは疑いの目で見られている文政権の南北融和路線も、韓国国内では幅広い支持を得ている。文の支持率は政権発足当初と比べて一時は大幅に低下したが、今年初めには50%を超えるまでに回復した。南北融和の進展が評価されたからだ。
米政府の対韓外交の枠組みは間違っているだけではない。韓国の人々は1987年に自分たちの手で勝ち取った民主主義を守るため、2017年にも闘った。その苦闘を無視した枠組みだ。
韓国の保守派と米政界にいる彼らの味方は派手なプロパガンダを展開しているが、事実は揺るがない。文政権はどこの国にでもある中道左派政権であり、最低賃金の引き上げなど穏健左派の政策を実施する一方で、大企業寄りの姿勢をおおむね維持している。
韓国は急速に変わりつつある。もはやアメリカの事実上の属国ではない。経済大国の仲間入りも果たし、アメリカにとっては外交戦略上の最重点地域における同盟国だ。韓国のリベラル派指導者に対する米側の根拠のない警戒心は重要な同盟関係を危うくする。
(筆者はワシントンで活動する弁護士でメディアに韓国政治の解説を寄稿)
<2019年3月12日号掲載>
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※3月12日号は「韓国ファクトチェック」特集。文政権は反日で支持率を上げている/韓国は日本経済に依存している/韓国軍は弱い/リベラル政権が終われば反日も終わる/韓国人は日本が嫌い......。日韓関係悪化に伴い議論が噴出しているが、日本人の韓国認識は実は間違いだらけ。事態の打開には、データに基づいた「ファクトチェック」がまずは必要だ――。木村 幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授が寄稿。
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