亡命生活60年となったダライ・ラマ 気がかりな継承者問題と中国「次の一手」
議論の対象に
ダライ・ラマによると、チベット在住のチベット人と亡命中のチベット人の間の接触は増えているが、中国政府と亡命政府側の会談は2010年を最後に行われていない。
だが非公式には、退官した中国政府関係者や、中国政府にコネクションを持つ実業家らが、時々訪ねてくることがあると、彼は明かす。
自分の死後のダライ・ラマの役割については、それを存続させるかどうかも含めて、今年後半にインドで行われるチベット仏教の会議で議論される可能性があると、ダライ・ラマは話した。
また、ブッダの生まれ変わりはいなかったが、それでもその教えは受け継がれている、とも述べた。
「もし(チベット人の)過半数が本当にこの制度を維持したいのならば、継続されるだろう。その上で、生まれ変わりであるダライ・ラマ15世の問題が出てくる」と、ダライ・ラマは説明した。
また、もし継承者が出るにしても、その継承者は「政治的な責任は負わない」とも述べた。ダライ・ラマ自身は2001年に政治的な職務を手放し、インドに住む最大10万人のチベット人向けに民主的な仕組みを作り上げた。
中国の僧院
ダライ・ラマはロイターとのインタビューで、宇宙学や神経生物学、量子物理学や心理学への情熱を熱く語った。
もし故郷訪問を許されることがあれば、こうした学問について中国の大学で講義したいと話す。
だが、中国が共産党の支配下にある間は、帰国が実現することはないと予測する。
「中国は、歴史の古い偉大な国だが、政治体制は全体主義的で、自由がない。従って、私はこの国にいる方を好む」
ダライ・ラマは、現在の中国青海省のチベット高原の端に位置するタクツェル村の農家に生まれた。
ロイターの記者が最近タクツェル村を訪問しようとした際は、自動小銃で武装した警察官が道をふさぎ、警官や10人以上の私服警察官が、村は地域住人以外立ち入り禁止だと話した。
「私たちの力は、真実から来ている。中国の力は、銃から来ている」と、ダライ・ラマは話す。
「短期的には銃の方が決定力を持つが、長期的には真実がより力を持つ」
(Krishna N. Das記者、Sunil Kataria記者)
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