「許そう、しかし決して忘れまい」と誓ったシンガポール、ナチスのかぎ十字ワッペン販売 アジアで薄れる戦争犯罪の影
日本には「許そうしかし忘れない」
シンガポール空軍博物館は1988年にチャンギ空軍基地に開設され、2015年から移転改築されて現在の場所で一般公開されている。
敷地の屋外には各種ヘリコプターや戦闘機などが展示され、館内には、空軍の制服、階級章、歴史を描いたパネル、またなぜかいつも「メインテナンス中(保守点検中)」のシミュレーターなどが展示されている。
シンガポールは第二次世界大戦中、日本軍の侵略を受けて米英豪連合軍やマレーシア人部隊が激戦を繰り広げ、双方に多くの死傷者がでた。さらに華僑などが多数虐殺された痛ましい歴史もある。
リー・クアンユー初代首相は日本との経済的関係強化などを念頭に過去の戦争の歴史について「許そう、しかし決して忘れまい」と語り、戦争にまつわる記憶、記念碑、歴史遺産の次世代への継承に政府を挙げて取り組んでいるのも事実である。
それだけにナチスドイツに関する無関心、無神経が根底にはあるといえ、空軍博物館土産店でのカギ十字ワッペンが販売されていることは、戦争の記憶を継承するという政府の方針とは矛盾するわけで、政府として空軍としての今後の対応が注目される。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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