最新記事

米中貿易

米中貿易戦争でトランプとアメリカが失ったもの

US-China Trade War Has No Winner, Additional Tariffs Hurt Both Sides

2019年2月13日(水)17時20分
ピーター・クインター(グレイロビンソン法律事務所関税国際部部長)

大豆は販売ルートが失われる一例にすぎない。中国はアメリカ以外の国から品物を輸入する可能性がある。食品から航空機、機械まで、米企業は世界第2位の経済大国という市場を失うことになる。

この貿易戦争の範囲は、中国製品に対する追加関税だけにとどまらない。現在、記録的な数のアンチダンピングおよび相殺関税措置が適用されるとともに、中国に対する調査が行われている。米国際貿易委員会(ITC)のウェブサイトによると、170品目を越える中国製品に対して反ダンピング関税と相殺関税措置がとられている。この数は、他のすべての外国に対する関税措置の合計を上回る。

現在は調査の対象になっている輪ゴムやスチール製クギなどの中国製品に対しても、反ダンピングまたは相殺関税措置がとられる可能性がある。

今こそ優秀な交渉者が必要

対中貿易交渉でトランプは90日間の「停戦」に合意、追加関税を10%に維持しながら交渉を続けることになった。3月1日までに交渉が合意にいたらなければ、中国製品の大半に10~25%の追加関税が課されるだろう。

トランプ政権が予測不可能であることは、もう十分にわかっている。トランプの貿易戦争が3月1日までに終結するとは私には思えない。中国との「平等な競争の場を作る」というトランプの試みが、勇気ある行為なのか、それとも無謀な試みなのかは歴史が判断するだろう。

今、私たちに必要なのは、国際交渉の達人だ。特にアメリカの生産者、輸出業者、そして消費者の未来は交渉の行方にかかっている。アメリカの鉄鋼とアルミニウム産業の関係者を別にすれば、この貿易戦争で得をする者は誰もいない。

(翻訳:栗原紀子)

20250128issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

TikTok、米アプリストアで利用できず 禁止措置

ワールド

トルコ北西部スキーリゾートで火災、76人死亡 捜査

ワールド

日米豪印が外相会合、開かれたインド太平洋への協力確

ワールド

次期米国連大使ステファニク氏、米国第一主義強調 指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 8
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    米アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが大型ロケット打ち…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中