最新記事

教育

優秀な若者を教職に引き寄せてきた日本で、とうとう始まった「教員離れ」

2019年2月6日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

事実、教員採用試験の競争率も低下している。小学校教員採用試験の競争率は、ピークの2000年度試験では12.5倍だったが、2017年度は3.5倍にまで下がっている。受験者は4万6156人から5万2161人に増えているが、増加は主に都市部で、数としては受験者が減っている県が多い。その一方で採用者は増えているのだから、どの県でも競争率は下がっている。<図2>は、小学校教員採用試験の競争率で47都道府県を塗り分けたマップだ。

maita190206-chart02.jpg

2000年度試験では38の県で10倍を超えていたが,最近はそういう県は皆無で5倍を超える県も4県しかない。最低の広島県は2.3倍で2人に1人が通る状況で、採用担当者は頭を抱えていることだろう。

競争率低下は採用者の増加による所が大きいが、受験者の減少も寄与している。現在は受験者を増やしている都市部も、こうした動きに侵食されない保証はない。公務員試験の競争率は景気動向と逆の動きをするのは知られているが、そのせいばかりにしてはいけないだろう。「教員離れ」が起きている可能性を疑ってみる必要がある。

最初のグラフで分かるように、日本は優秀な人材を教員に引き寄せるのに成功してきた。労働条件や待遇が良くないにもかかわらずだ。個々の教員の熱意ややりがい感情に寄りかかっているわけだが、こういう虫のいいやり方も綻びを見せ始めてきた。教員の専門職性を明確にし、働き方改革を断行しなければ、他国と同様、優秀な人材は他の専門職に流れてしまうだろう。

<資料:OECD「Effective Teacher Policies」2018年
    文科省『公立学校教員採用選考試験の実施状況』

20250304issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月4日号(2月26日発売)は「破壊王マスク」特集。「政府効率化省」トップとして米政府機関をぶっ壊すイーロン・マスクは救世主か、破壊神か

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フジ・メディアHD、日枝相談役が経営諮問委員を辞任

ビジネス

インド裁判所、アマゾンに商標権侵害で賠償命令 39

ワールド

タイ首相「人権尊重」強調、ウイグル人の中国送還疑惑

ビジネス

日産、3月12日に役員削減発表 現時点では内田氏退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほうがいい」と断言する金融商品
  • 3
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教育機会の格差
  • 4
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 5
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 6
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「縛られて刃物で...」斬首されたキリスト教徒70人の…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中