最新記事

経済

ダボス経済フォーラムに米中対立の影 「欠席組」が話題独占

2019年1月25日(金)17時42分

今年のダボスには、世界で最も強力な指導者2人が来ていないが、それでも彼らは話題の中心から逃れることはできないようだ。写真は2017年11月、北京で会談する中国の習近平・国家主席(左)とトランプ米大統領(2019年 ロイター/Damir Sagolj)

今年のダボスには、世界で最も強力な指導者2人が来ていないが、それでも彼らは話題の中心から逃れることはできないようだ。

中国の習近平・国家主席は、2年前の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で行った演説で、中国が自由貿易の最大の擁護者だと訴えた。資本やテクノロジー、モノや産業、そして人々による経済間の移動を阻止するどんな試みも「単純に不可能だ」と語った。

翌年のダボス会議では、トランプ米大統領が次のように訴えた。「私のメッセージはシンプルだ。米国で雇用や建設、投資を行って成長するのに、これ以上適した時期はなかった。米国はビジネスにオープンだ」

米政府は自由貿易にコミットしているとトランプ大統領は約束したものの、「他国の犠牲の上にシステムを悪用する国があるなら、自由で開かれた貿易はできない」とも警告していた。

両首脳とも演説で、競合国については言及しなかったが、それぞれが理想とする世界貿易の輪郭を打ち出す中で、互いの国を念頭に話していることは明らかだった。

昨年の展開を見る限り、どちらも相手の演説を聞き入れた形跡はない。そして、このすれ違いが生んだ「副産物」こそが、今年ダボスで習氏とトランプ氏が頻繁に話題に上る理由となっている。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、同会議のセッションで、特定の国名は挙げずに、一部の国が、過去数十年かけて築かれたルールに基づく多国間システムから離脱しつつあると指摘。「それがもはや主流でないならば、われわれは苦境に陥るだろう」と付け加えた。

コンサルタント会社マッキンゼーでグローバル・マネージング・パートナーを務めるケビン・スニーダー氏は、貿易摩擦は「米中のより広範な緊張関係の一部分でしかない」と指摘する。

世界の2大経済大国が繰り広げる貿易戦争は、すでに世界の成長を鈍化させ、サプライチェーンや企業の事業計画を変更に追い込み、カナダからシンガポールに至る広範な国々に影響を及ぼしている。

国際通貨基金(IMF)はダボス会議の開幕前日の21日、世界経済見通しを引き下げた。別の調査では、世界の企業経営者の間で悲観的な見方が強まっていることが明らかになっている。

ビジネスの現場では、何カ月も前から影響が出ている。

例えば、中国で米アップルの「iPhone(アイフォーン)」端末を製造する台湾フォックスコン<2354.TW>は、貿易戦争の影響を抑えるため、ベトナムやインドでの工場新設を検討している。

自動車メーカー各社も、関税引き上げ措置を受け、一部車種の組み立て工場を移設しようとしている。

またオーストラリアでは、通貨からワイン醸造業者、住宅所有者に至るすべてが、経済戦争の影響を感じている。

「経済がどの程度減速しており、通商面での関税影響がどの程度で、通商交渉には実際どんな効果があるのか」を、人々が知りたがっていると、米シティグループのコーバット最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

村田製が新中計、27年度売上収益2兆円 AI拡大で

ワールド

ロシア、ウクライナ・ミコライウ州のエネインフラ攻撃

ワールド

リトアニアで貨物機墜落、搭乗員1人が死亡 空港付近

ワールド

韓国とマレーシア、重要鉱物と防衛で協力強化へ FT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中