原発建設、日立撤退で立場強める中・仏企業連合 英国のエネルギー安全保障と脱炭素化戦略は風前の灯火
協議難航か
東芝と日立の計画について、専門家は当初から失敗する運命だったとみている。
これほど長期の計画の資金を手当てできるのは着実なキャッシュフローがある公益企業だけだが、2011年の福島第一原発の事故で安全コストが跳ね上がり、再生可能エネルギーの競争力が高まって以来、欧州のほとんどの公益企業は英原発建設から手を引いてしまったからだ。
それでもRABモデルは、欧州の原発建設費用をねん出できる数少ない手法かもしれない。送電網の敷設にはよく利用され、ロンドンで建設が進む「スーパー下水道」の資金調達にも使われた。
EDF幹部の1人は「RABモデルを巡る話し合いは進展しつつある」と語った。
ただしRABモデルが原発建設に用いられたケースは過去にない。英政府としては、支出を迫られる期間や支出額をはっきりと詰めて、上振れたコストを負担する白紙小切手を切らないようにしなければならず、今後の協議は難航する公算が大きい。
英政府は遅くとも夏までに判断結果を公表することを目指している。
今のところ英国で建設中の原発は、EDFが主導し、CGNが33.5%の権益を保有する「ヒンクリーポイントC」だけになった。
同事業ではEDFが資金調達を担い、コスト上振れや建設遅延による全てのリスクを背負う見返りに、電力価格を向こう35年間、メガワット時当たり最高92.50ポンドと契約時の市場価格の2倍強に設定することが保証された。
これには条件が甘すぎると議会や国民からの批判が殺到した。
半面、東芝と日立がいなくなった以上、英政府はエネルギー需要の高まりに対応するための原発新設をEDFとCGNに頼らざるを得なくなっている。
仏コンサルタントのティボー・ラコンデ氏は「英国のエネルギー安全保障と脱炭素化戦略は危機に瀕している」と指摘した。
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