最新記事

日ロ首脳会談

日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない

2019年1月24日(木)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

安倍首相とプーチン大統領(昨年9月、ロシアのウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで) Mikhail Metzel/REUTERS

ソ連が崩壊した直後の1992年に、北方領土問題を解決する絶好のチャンスがあったが、日本はそれを逃しただけでなく、同年、中国にエールを送って日本経済崩壊の道を選んだ。その失策から日本は這い上がれるのか。

ソ連崩壊時のチャンスを逃してしまった日本

中国共産党が派遣した中共工作員に籠絡されて、アメリカのルーズベルト大統領は盛んにソ連のスターリンに太平洋戦争(対日戦)への参戦を促し、結果、ソ連は日本敗戦の数日前になって参戦して北方4島を占拠した。

1945年8月9日、日ソ不可侵条約を破って、ソ連が「満州国」への攻撃を始めると、「満州国新京特別市」にあった関東軍司令部からは黒煙が立ち昇った。関東軍が日本人居留民を遺棄して、自らの安全のみを重んじて南へ逃げてしまったからだ。

あの黒煙を目の前で見てから70数年の月日が流れたが、アメリカの愚かさやソ連の狡猾さもさることながら、日本外交の稚拙さは今も変わらない。

1991年12月25日にソ連が崩壊すると、中国は直ちに中央アジア5カ国を目まぐるしく回り、92年1月7日までに「ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタン」を訪問して、その日の内に国交を結び、署名をして公布した。1月30日までには旧ソ連が崩壊した後に独立あるいは誕生した全ての国との国交を結び終えた。

これが現在の習近平政権による「一帯一路」経済圏構想の基礎を成している。

片や日本はどうだったのか。

経済的にどん底にあったロシアのエリツィン大統領は経済的支援を得ようと日本に急接近し、そのためなら北方4島を日本に返還しても構わないほどの勢いだった。ロシア国民も長きにわたるソ連共産党の一党独裁政治に激しい嫌悪感を抱き、明日のパンの保証もない飢餓状態にあったので、北方4島などに関心を持っていなかった。そもそもあれはスターリンの独裁による旧ソ連が行なった蛮行だ。あの忌まわしい共産主義体制が崩壊した今、北方4島を占領した「ソ連と言う国家」が焼失したのだから、この時点でご破算になっても構わないという「ロシア国民」の感情もあった。

事実、それに後押しされて、エリツィン政権は日本に4島返還と交換条件に日本の対ロ支援を求めている(参照:本田良一著『証言 北方領土交渉』)。ところが日本はその要求を無視し、選挙制度改革法案などに明け暮れ、自分が当選できるか否かということにしか関心がなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中