米株価乱高下続きの今年、成功した投資戦略とは?
12月26日、米株式市場はこの10年間ほぼ無風状態が続き、動揺しても一過性だったため、ボラティリティに連動する金融商品に投資して利益を上げるには、タイミングを見定める手腕が欠かせなかった。NY証券取引所で撮影(2018年 ロイター/Jeenah Moon)
米株式市場はこの10年間ほぼ無風状態が続き、動揺しても一過性だったため、ボラティリティに連動する金融商品に投資して利益を上げるには、タイミングを見定める手腕が欠かせなかった。
しかし今年は様相が一変した。相場の乱高下が続いてボラティリティ関連市場が活気付き、こうした金融商品を買って保有し続けていれば簡単に利益が手に入った。
S&P総合500種指数は過去3カ月間の下落率が19%と、先の世界金融危機以来の大幅な下げとなり、今年初めに危険を冒してボラティリティに連動する金融商品に投資したトレーダーは70%を超える利益を得た。
タイフォン・キャピタルの共同ヘッド、マット・トンプソン氏は「今年のボラティリティ連動商品市場では単純な『バイ・アンド・ホールド』という、ほとんどの場合は機能しない投資戦略がうまくいった」と述べた。
ボラティリティは通常、株式相場が下げると上昇するため、ボラティリティ連動商品の購入は一種の保険だ。ただ、他の保険商品と同様にコストを伴う。
ヘッジファンドのパープラス・パートナーズのジム・カーニー最高経営責任者(CEO)は「ボラティリティ関連商品の保有には大きなコストが付随するのが普通だ」と述べた。
オプションや先物、上場投資証券(ETN)などボラティリティ関連商品の大半は、株式相場が落ち着いたり上昇したりすれば、急速に価値を失う。しかしカーニー氏によると、今年は日々の値動きが大きい状態がいつまでも続き、数年ぶりにボラティリティ関連商品の投資がリターンを産んだという。
例えばシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(VIX指数)に連動する「iPath・S&P500・VIX・短期先物・ETN(VXX.P)(VXX)」は、今年の上昇率が約72%となった。
VXXは1カ月物と2カ月物の2本のVIX先物を組み合わせており、満期が来ると1カ月物を売って2カ月物を買い、これを繰り返す。
パープラスのカーニー氏によると、VIX先物で1カ月物の価格が2カ月物を下回る場合、VXXの保有には膨大なコストが生じるが、足元では1カ月物が2カ月物とほとんど同じ価格か、もしくは上回っており、コストが発生しないという。
VXXは通常、価格の安い1カ月物を売って価格の高い2カ月物を買い続けるため、常に価値が減っていく。2009年にVXXに10万ドル投資していれば、現在の評価額は約40ドルとなっている計算だ。
しかし今のように市場がストレスにさらされている場合、期近物が期先物よりも価格が高くなり、VXXは活気付く。VXXは今年、ほぼ10年ぶりにプラス圏で年を終える見通しだ。