最新記事

米中貿易交渉

米中貿易交渉、トランプお馴染みの卓袱台返しで株価乱高下

Stocks Fall As Trump's Deal With China is Walked Back

2018年12月5日(水)17時00分
ニコール・グッドカインド

アルゼンチンのブエノスアイレスで夕食会に臨む米中首脳   Kevin Lamarque-REUTERS

<「実際、米中首脳会談では何一つ合意にいたらなかったようだ」という株式アナリストの発言で、株価は一転大暴落>

12月4日、ダウ工業株30種平均が急落した。ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の間で行われた貿易協議に進展がなかった、との見方からだ。

トランプは3日にツイッターで、中国との関税問題が交渉により「一時休戦」に至ったことを明らかにし、まもなく恒久的な合意に至るとの見方を示した。しかし、ホワイトハウスおよび中国政府からの正式見解はトランプの言葉と矛盾し、トランプがもたらした楽観論に冷や水を浴びせるものだった。

JPモルガンのトレーダーチームは、4日のデスク解説で以下のようにコメントした。「(米中首脳の)夕食会の席で実際に合意に至った事項は何もないとみられる。ホワイトハウスの高官たちも、トランプのツイート(完全なねつ造とまでは言えないが、過度に誇張されているようだ)と事実のつじつまを合わせるために、自らの見解をまるでプレッツェルのように曲げざるを得なくなっている」

3日遅くには、米国債のイールドカーブ(利回り曲線)が反転した。これは一般的に、米国経済の減速を示す兆候とされている。その結果、4日のニューヨーク株式相場では、ダウ平均が前日終値比で800ドル近く急落して終了した。

トランプと習近平は、アルゼンチンで行われたG20サミットの期間中に夕食会の席で首脳会談を行い、両国が対立する貿易問題について協議を行った。トランプが交渉妥結をにおわせるツイートをしたのはその後だ。トランプは、アメリカから輸入する自動車に対する関税の引き下げに中国が応じたと述べたが、中国側からはこの発言を裏付けるコメントはなかった。さらに、トランプの側近であるラリー・クドロー国家経済会議院長も3日、近々に交渉がまとまる見込みはないと発言した。

「約束は合意とは違う」

クドローは報道陣に対し、「今の時点では、私はこれを『約束』と呼ぶつもりだ。約束というのは、必ずしも合意とは限らない」と、苦しい弁解を述べた。

スティーブン・ムニューシン財務長官も、トランプの発言に対し慎重な姿勢を示した。「両首脳による合意を、今後90日間で本物の協定にするという、明確な理解は存在するのだと思う」と同長官は報道陣に語り、「私は習主席の言葉、トランプ大統領に対する約束を額面通りに受け取っている。しかし中国は言ったことを実行に移さなければならない」と続けた。

ニューヨーク株式市場の株価は3日、トランプのツイートを受けて一時的に大幅高となったが、ホワイトハウスと中国が、大統領の発言の火消し役に回ったことで再び急落した。

トランプはその後、中国が約束を守らないならさらに関税を引き上げることも辞さないとして、強圧的な姿勢に戻った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き

ビジネス

トランプ氏「習主席から電話」、関税で米中協議中と米

ワールド

ウクライナ和平案、米と欧州に溝 領土や「安全の保証

ビジネス

トヨタ創業家が豊田織に買収・非公開化を提案=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 7
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中