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米中首脳会談

中国には対米強硬派がいるわけではない

2018年11月30日(金)16時32分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「なぜ米国の博士学位が高く評価されるのか」を調査し続けたところ、「中国社会の米国という国への憧れと高い評価」が浮き彫りになってきた。

それはどのような業種においても同じで、中国社会全体が米国という国を高く評価し、強い憧れを抱いていることが原因だった。

かてて加えて、1994年から当時の江沢民国家主席が愛国主義教育を開始し、95年からは反日教育を始めたので、日本に留学して帰国した元中国人留学生は肩身の狭い思いをするようになった。

ただし、『中国動漫新人類  日本のアニメと漫画が中国を動かす』に書いたように、アニメや漫画に関しては別格だ。

米国に追いつき追い越すための国家戦略「中国製造2025」

2015年5月、習近平政権は「中国製造2025」という国家戦略を発表したが、それは何度も書いてきたように、2025年までにハイテク製品のキーパーツである半導体をメイド・イン・チャイナ(中国製造)にして自給自足し、2022年までに中国独自の宇宙ステーションを稼働させて宇宙を支配するという戦略である。2024年には日米が主導する国際宇宙ステーションの寿命が尽きるので、それに代わって中国が他の国を受け入れましょうという計画である。国際宇宙ステーションは、米国が中国を敵対勢力とみなして、参加国の中に入れないということを基本方針としてきた。

そのことが中国の闘争心を刺激して、「アメリカに追いつき追い越せ」は中国国家全体の、ほぼ一致した心情であり、そこに対米強硬派と対米穏健派がいて権力闘争をしているなどという次元の問題ではない。

明日、行なわれるであろう米中首脳会談の互いに譲れない一線は、「中国製造2025」を実現するか阻止するかという点にあり、そこが分岐点になることは明らかだ。

米中首脳会談における貿易・通商などの交渉に関しては、この基線にある分岐点は見えてこないだろうが、何が分岐点になっているかを認識していさえれば、表面に出てくる結果を読み解きやすくなるのではないかと思う。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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