安倍首相は「三つの原則」と言っていなかった──日本の代表カメラの収録から
10月26日、李克強首相との会談後に会見に臨む安倍首相(北京) Thomas Peter-REUTERS
日中首脳会談冒頭における安倍首相の生の声を精査したところ、安倍首相は李・習両首脳に対して会談で「三つの原則」と言っていないことが判明した。従って日本が今後の日中の主導権を握る事態は存在していない。
日本の代表カメラの収録から
筆者が某テレビ局の取材を受け、安倍首相が日中首脳会談で「三つの原則」と言ったか否かに関して中国側資料と照らし合わせながら回答しなければならない状況の中で、その番組スタッフにお願いして日本側の現場の取材記録を調べてもらいテープ起こしをしてもらった。番組スタッフからは共同作業だったので使っても構わないという許可をいただいたので、ここで使わせていただくこととする。
安倍首相は11月5日の衆議院予算委員会の国会答弁(11:18:35)で、「報道を見ていただければわかりやすいことなんですが、私は習近平主席と李克強総理との会談の冒頭ですね、取材しているカメラの前で、これら3つの原則に明確に言及をして、習近平主席、李克強総理からも会談中で、同様の発言があって、これらの原則の重要性について完全に一致をしています」と言っている。
ならば、日本側のカメラ記録を検証するのが道理だろう。
テープ起こしをした安倍首相の発言を以下に示す。
●10月26日午前、安倍首相と李克強総理との会談における安倍首相の冒頭発言。
――本年の5月に、中国の国務院総理としては8年ぶりに李克強総理に訪日していただき、日中関係はまさに正常な軌道にもどったと思います。今回のわたしの日本の総理大臣としての7年ぶりの公式訪問によって、日中関係をあらたな段階へと押し上げていきたいと思います。(感謝の言葉が続くので省略)競争から協調へ、日中関係を新たな時代へと押し上げていきたいと思います(注1)。日中は隣国同士であり、パートナーであり、お互いに脅威とならない(注2)、第四の文書で合意したこの原則を、再確認をしたいと思います(注3)。また日中で、自由で公正な貿易体制を発展進化させていいきたいと思います(注4)。今回の私の訪中から、そして更に習近平主席の日本訪問と、ハイレベルの往来を間断なくつづけていくことによって、更に日中関係を発展させていきたいと思います。