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動物アジアゾウはヒトと類似する数量認知能力を持つ──日本の研究チームの発表が話題に
タッチパネルでテストするアジアゾウ Credit: Ethological Society and Springer Japan KK, part of Springer Nature 2018
<日本の研究チームが、アジアゾウにヒトと類似する数量認知能力が備わっていることを初めて明らかにし、欧米のメディアでも広く採り上げられている>
私たちには数量認知能力があり、数字などの記号や言葉を使って数を数えている。では、ヒトと同様の数量認知能力を持つ動物は、他に存在するのだろうか。このほど、日本の研究チームが、アジアゾウにヒトと類似する数量認知能力が備わっていることを初めて明らかにし、欧米のメディアでも広く採り上げられている。
タッチパネルを使った数量認知実験を行った
総合研究大学院大学の入江尚子研究員を中心とする研究チームは、東京都恩賜上野動物園で飼育されているメスのアジアゾウ「ウタイ」を対象にタッチパネルを使った数量認知実験を行い、その研究成果を2018年10月22日、学術雑誌「ジャーナル・オブ・エソロジー」で発表した。
この実験では、46インチの大型タッチパネル画面の左右に、1から10までの2種類の数量をリンゴ、バナナ、スイカで表示し、数の多い方を鼻で選択させた。「ウタイ」は271回のうち181回で正しく選び、その正答率は66.8%であった。
2種類の数量の組み合わせによって正答率に変化があるのかについても検証した。その結果、比較する2種類の数量の差が小さくなったり、2種類の数量を合わせた総量が大きくなっても、正答率に変化はみられなかった。
また、正答時の回答時間を記録し、分析した。2種類の数の総量は回答時間に影響しなかったものの、2種類の数の差が小さくなるほど、数の比が1に近づくほど、回答時間が長くなった。これは、「ウタイ」が難易度の高い数量比較においてはより精密な判断を必要とし、多くの時間をかけたためと考えられている。
言語のない種がヒトと類似する相対的数量認知能力を持つことを初めて示す
これまでにも、グッピーなどの小型魚やカエル、ミツバチ、アフリカライオン、アカゲザル、カラスなどに数を認識する能力があることがわかっているが、「ウタイ」の実験結果によれば、アジアゾウは、数量の差や比、総量に影響されない高度な相対的数量認知能力を持ち、難易度の高いとみられる課題には精密な判断を必要とするという点で、これまで研究対象となった他の種とは異なっている。研究チームは「言語のない種がヒトと類似する相対的数量認知能力を持つことを初めて示すものだ」と述べている。
米コロラド州立大学のジョージ・ウィッテマイヤー教授は、米デジタルメディア「インヴァース」の取材に対して「この研究成果はアジアゾウの数量認知能力を解明するうえで興味深いものだ」と高く評価するとともに、採餌の判断をしなければならない野生のゾウならば、数量認知能力はさらに高まるのではないかとの見解を示している。