日中首脳会談に望む──習近平は「一帯一路」で「宇宙支配」を狙っていることに気づいてほしい
ご存じだとすれば、このような危険な選択はしないだろうし、また、ご存じないとすれば、中国に協力の手を差し伸べることが、長い目で見れば、どれだけ日本国民の利益を大きく損ねるかに注目していただきたい。「目の前のチャンス」に目を奪われてはならないのではないだろうか。
トランプがINF全廃条約から離脱する真の狙いは中国か
トランプ米大統領は10月20日、旧ソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱と、これに伴って新型核兵器の開発に着手する方針を表明した。
ロシアが条約に違反しているのが理由だとしているが、注意深く聞いているとトランプは「中国を牽制するためでもある」という趣旨のことを言っているし、2017年4月、当時の太平洋軍司令官だったハリス氏は「INF条約は、中国や他国の巡航ミサイルや地上発射型のミサイルへの対抗力に制限を課しており、アメリカが対抗することを困難にしているので、再考しなければならない」と言っていた。
つまり、INF全廃条約は旧ソ連との間だけで結ばれているので、現在のロシアには制限を掛けることができるが、中国を牽制することができないのである。
したがって、INF全廃条約に加盟していない中国が「空母キラー」と呼ばれる弾道ミサイルの開発を推進していることに対抗して、アメリカが今後新型核兵器の開発に着手できるための正当な理由を見つけるためにINF全廃条約からの離脱を考えたのではないかと思うのである。
それくらい、アメリカは中国を警戒しており、特にトランプは「中国製造2025」が完遂するのを何としても阻止したいと思っている。
「中国製造2025」には「宇宙開発」への狙いが深く潜んでおり、「2016 中国宇宙開発」白書は、2015年に発布された「中国製造2025」とペアになっているとみなすべきである。
すなわち、「一帯一路」には、「宇宙支配」という「中国の夢」「強軍の夢」が込められていることを、日本は見落としてはならない。
日本は今「中国の夢」「強軍の夢」が実現するように手を貸そうとしているのである。どんな条件を付けようとも、「一帯一路」に協力するということは、そういうことだ。
このことに、どうか日本は気が付いてほしいと切に望む。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。