ダイソンはなぜEV生産拠点に中国ではなくシンガポールを選んだのか?
「小さい市場規模」対「中国の玄関口」
EVをここで製造するにしても、実際、シンガポールや他の東南アジアを走るダイソンの自動車はごくわずかだろう。
シンガポールで個人が所有するEV数は1桁にとどまる。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は過去に、シンガポールがEV支援に積極的ではないと批判している。
シンガポールは、世界的に自家用車を所有するコストが最も高くつく国の1つだ。政府は、一定の年数に自動車を所有・使用する権利として料金を徴収し、自動車の保有台数を厳しく管理している。
東南アジア全体では、今年のEV販売予想台数はわずか142台にとどまる、とLMCオートモティブのデータは示している。
対照的に、中国では今年、販売台数がほぼ70万台に達すると見込まれている。これは、米国と欧州での合計販売台数の倍にあたる数だ。
世界有数の取扱量を誇る港を擁するシンガポールに工場を置くことで、ダイソンは、完成後1時間以内にEVを中国や韓国や日本などの主要市場に向けて出荷してしまうことも可能だろう。
羽根なし扇風機や空気清浄機、ヘアドライヤーなどの製品も扱うダイソンは、中国などのアジア市場で高級ブランドとしての地位を築きつつある。同社によると、昨年の成長の70%はアジアだった。