最新記事

中国

中国政府、外交に人工知能やビッグデータ導入で競争力向上へ

China Is Using AI to Help Make Diplomatic Decisions

2018年7月31日(火)15時00分
ジェイソン・レモン

人工知能やビッグデータの力を借りつつ、最終的な決断を下すのは習近平 Gulshan Khan/Pool via REUTERS

<国際情勢の分析などに人工知能を活用し国際社会での競争において優位を目指す>

中国外務省は、外交問題についての決断を下す上で人工知能(AI)とビッグデータを活用する。AIを使った外交システムを複数、開発中だ。7月30日付の香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストが報じた。

同紙はまた、中国外務省報道官の次のような発言を報じた。「ビッグデータや人工知能をはじめとする最先端テクノロジーは、人々の働き方や生き方に大きな変化をもたらしており、こうしたテクノロジーを活用する業界やセクターが日々増えている。我々としても今後、このトレンドに前向きに適応し、業務の拡大や向上のために新たなテクノロジーを活用することを検討していくつもりだ」

また同紙によれば研究者たちは、中国政府がAIを導入しても最終的な判断は引き続き人間が下すだろうと指摘。外務省では、AIを状況分析や意志決定プロセスの支援に役立てる計画だ。

「人工知能システムは、科学的・技術的な能力を活用してデータの読み込みや分析を行うことができる。この点において人間の能力は人工知能にはかなわない」と、上海国際問題研究院の上級研究員でAIの導入について研究を行っているフェン・ショアイ博士はサウスチャイナ・モーニングポストに語った。人間のようにホルモンの作用で判断がくるうこともない、と。

既に「国民監視」にAIを導入

中国は既にそのほかのセクターでAIを導入しており、2020年までに全国民に適用されることになっている「社会信用システム」は大きなニュースになった。同システムは監視ツールや機械学習ツールを活用して国民を監視・スコア化し、スコアが高い者に恩恵を、低い者に罰を与えることで社会の管理を目指すもの。

このシステムの下、政府に批判的な人々が航空便の利用や土地の購入を禁止されたり、子どもをいい学校に通わせることができなかったりするという事態が起こっている。

国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当上級研究員マヤ・ワンは5月に本誌に対し「社会信用システムは習近平政権が良い行いを促進し悪い行いを罰するために導入する総合管理システムだ」と指摘。「システムが整っていくにつれて、さらに多くの人がそれによる嫌がらせを受けることになるだろう」

電子商取引大手アリババの創業者で大富豪の馬雲はAIの導入を支持しており、AIは中央政府が経済計画を策定する能力を向上させるだろうと語っている。外交専門誌フォーリン・アフェアーズによれば馬は、AIを導入することで中国政府は市場原理をより正確に予測することができるようになり、それによって経済活動をよりいい方向に導き、より良い計画を立てることができるようになると考えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中