相場操縦の中国人摘発、日中当局が初連携 国境またぐ不正に警鐘
7月17日、日本の証券取引等監視委員会と中国証券監督管理委員会(CSRC)が不正摘発で連携を深めている。写真は東京証券取引所で2015年8月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
日本の証券取引等監視委員会と中国証券監督管理委員会(CSRC)が不正摘発で連携を深めている。証券監視委が今年6月末、相場操縦の疑いで中国在住の個人投資家への課徴金納付命令の勧告に至った背景には、両国の当局同士の交流が深まったことがあった。グローバル化した金融市場で存在感を高めつつあるアジアの個人投資家に対し、不正取引への警鐘を鳴らす第一歩になったと証券監視委は自信を深めている。
ココカラファイン株の不自然な発注、追跡の末に
「この値動き、何か不自然だな」──。3年前の2015年7月8日午前9時過ぎ、株式市場の取引を映し出すモニターを見ていた証券監視委・市場分析審査室のスタッフの1人は首をかしげた。
東証からの情報で、不自然な動きがあると報告があったドラッグストア経営のココカラファイン株<3098.T>。その株価が徐々に値を下げていたが、その後は一転して上昇し始めた。
この時、証券監視委の情報提供窓口にも、証券取引所や個人投資家から不自然な動きの銘柄があるとの報告が寄せられていた。
証券監視委が、こうした情報などをもとに調査したところ、その銘柄に買い仕込み注文が発注されていた。同時に売り注文も、1単位(100株)という最少単位で繰り返し発注する動きが、10分間で90回余りも繰り返されていた。
同株が値を下げたところで、発注者は実際に買い注文を約定し、結果的に安く株を買うことができた。この時、市場での売り板占有率は80%に上っていた。その後、売り見せ玉を含む売り注文を全て取り消した。
今度は買い見せ玉を用いて逆の取引を行い、値を吊り上げたところで、売り抜けを図り、安く仕入れた同銘柄を高く売ることで利益を上げていた。買い板占有率は90%に上っていた。
「明らかに自分に有利な価格で約定するための相場操縦」との確信を得た証券監視委は、東証や証券会社に裏取りを始め、この取引を取り次いだ日本の証券会社の先に米国の証券会社が存在し、さらにそこが受託したのは、中国在住の中国人の注文であることを突き止めた。