最新記事

米世論

アメリカ人の半数がNATO同盟国の防衛に否定的

Half of Americans Don’t Want to Defend NATO Allies

2018年7月20日(金)17時30分
デービッド・ブレナン

トランプは、NATO加盟国の首脳たちにはほとんど敬意を見せなかった Francois Lenoir-REUTERS

<NATO諸国をロシアから守るために、アメリカだけが大きな負担を負っており不公平だ、というトランプの論理を真に受けているアメリカ人が半数近いという懸念すべき調査結果が明らかに>

応分の国防費負担をしないNATO加盟国が戦争に巻き込まれても、アメリカはこれを防衛すべきでない──アメリカ人の半数近くがそう考えていることが、最新の世論調査で明らかになった。

ドナルド・トランプ米大統領がけんか腰の態度で臨み、同盟国を震撼させた7月11~12日NATO首脳会議の後、アメリカの有権者を対象に実施したロイター/イプソスの世論調査によれば、49%の回答者が同盟国に国防費の増額を要求するトランプの態度を支持した。

トランプは首脳会議の週の大半を、同盟国に防衛費の「応分の負担」を求める、という主張と、アメリカはロシアの脅威から欧州の同盟国を守るために金を使いすぎている、とする持論に費やした。NATOの全加盟国は国防費を2024年までにGDPの2%まで引き上げると約束しているが、トランプはそれでは納得しない。

旧ソ連の脅威に対抗するため、アメリカがNATOを創設したのは1949年。NATOの相互防衛条約は、「欧州または北米の加盟国が攻撃を受けたら全加盟国への攻撃と見なし」集団で防衛する、と定めている。これまでに一度だけ相互防衛義務が発動されたのは、2011年の米同時多発テロ発生後、NATO諸国がアメリカの対テロ戦争に参戦した時だ。

アメリカと同盟国に亀裂

今回の調査の対象になった1011人のうち、共和党員が453人、民主党員が399人。もしNATOの同盟国が国防費を増やさなければ、アメリカは相互防衛義務を果たす必要はない、とした回答者は49%に上り、「分からない」が18%。本誌はNATOにコメントを求めたが、回答はなかった。

第二次大戦後の国際秩序の礎となったNATOを繰り返し軽視するトランプの言動に、同盟国は戦々恐々としている。NATOのみならず、NAFTA(北米自由貿易協定)、EU(欧州連合)、WTO(世界貿易機関)など、多国間の枠組みにトランプはほとんど思い入れがない。トランプが繰り返し批判することで、国際機関に対するアメリカ人の支持が衰えることが懸念されている。

NATO首脳会議に先立って、NATOのジェンス・ストルテンベルグ事務総長は、加盟国で国防費が2018年にGDP比2%の目標を達成しそうなのはアメリカ以外の28カ国中7カ国で、2014年より3カ国増える、と言った。だがトランプは、数年以内ではなく今すぐ全加盟国が2%を払うべきだ、と応じた。

トランプは一時、GDP比目標を現行の2%から4%に引き上げるよう要求した。アメリカの現在の国防費はGDPの約3.5%だから、アメリカも増やすつもりだったのか。トランプはまた、アメリカはNATOの費用の90%を負担しているとも主張したが、実際の負担は約70%。そのうち欧州諸国におけるNATO関連の防衛費に使われるのはわずか15%だ、とロイターは報じた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

自動車関税に伴う値上げ「全く気にしない」=トランプ

ビジネス

UBSグローバル、S&P500種の25年末目標を6

ワールド

トランプ氏、5月中旬にサウジ訪問を計画 2期目初の

ビジネス

日中韓貿易相会合、地域貿易の促進で合意 トランプ関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中