最新記事

朝鮮半島情勢

世界で最も軍事化された朝鮮半島の南北軍、軍事力を比較すると

2018年6月19日(火)17時00分
トム・ポーター

軍事訓練に参加する北朝鮮軍兵士。2015年の写真とされる KCNA/REUTERS

<最新鋭兵器とアメリカという同盟国をもつ韓国、空腹の兵士が多いが核兵器ももつ北朝鮮、戦わないのが一番だが>

韓国国防省と米国防総省は18日、8月に予定していた合同軍事演習の中止を発表した。17日には韓国の聯合ニュースが、米韓が今週中に、北朝鮮が非核化の約束を守らなかった場合には再開することを前提として「大規模」軍事演習の中止を発表する見通しだと報じていた。

今回の決定は、6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談を受けてのものだ。この会談の際、ドナルド・トランプ米大統領は米韓の軍事演習を「戦争ゲーム」と北朝鮮特有の呼び方で呼び、これを中止すると約束していた。

朝鮮半島は世界で最も軍事化された地域のひとつだ。朝鮮半島に配備されている北朝鮮軍と韓国軍の強さを比較してみよう。

北朝鮮と韓国、それぞれの軍の強さを評価する一つの手段が、兵士の数と保有する兵器の数を比較することだ。

数の上では、北朝鮮の朝鮮人民軍が韓国軍に勝っており、兵士の数と火砲の数は韓国の2倍を誇る。

イギリスのシンクタンク国際戦略研究所(IISS)が発表した軍事年鑑「ミリタリー・バランス」2015年版によると、北朝鮮の現役兵力が119万人なのに対して韓国は65万5000人。火砲の数は北朝鮮の2万1000に対し韓国が1万1000だ。また米国防総省によれば、北朝鮮はGDP(国内総生産)の4分の1近くを軍に費やしている。

「飛べない戦闘機」と老朽化した兵器

だが兵士や兵器の数だけでは判断できない。韓国は同盟国のアメリカから調達した最新型の装備や兵器を保有しており、両国の軍には質の面で大きな差があるという。

「北朝鮮が保有する戦車は、60年代後半に旧ソ連で製造されたT62戦車。韓国が保有する2013年のK2戦車に太刀打ちできない」と、ボン国際軍民転換センターのマーティン・ベイルズは17年にドイツの国営ラジオ「ドイチェ・ウェレ」に語っている。

記録上は、北朝鮮はいつでも飛べる戦闘機を563機保有している。だがIISSによれば、整備や保守上の問題から、2014年には全ての戦闘機が一時飛行禁止となっている。陸軍と海軍も老朽化した兵器ばかりだ。
この劣勢をみれば、北朝鮮が核兵器の開発に重点を置いている理由が分かる。韓国を軍事力で逆転するには核兵器をもつのが手っ取り早いからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中