米朝首脳会談スタート 金正恩のためシンガポール「前例ない」厳重警備
10日、シンガポールの市街地を警備する警察官(2018年 ロイター/Feline Lim)
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が12日開催する首脳会談の最大の焦点は、北朝鮮の非核化だ。だがシンガポールに降り立った北朝鮮政府の要員にとっての最重要事項は、もっと狭い範囲に絞られている。
それは、彼らの指導者を守ることだ。
トランプ大統領と初の会談に臨む金委員長のセキュリティは、最大限に厳しいものになり、4月27日に行われた南北首脳会談を上回る手段が講じられる可能性が高いと、専門家やアナリストは予想する。
4月の南北首脳会談では、金委員長が乗ったメルセデスベンツが南北軍事境界線を移動するたびに、その周りを取り囲むように走って警備していた細身の男性ボディガード12人が国際的な注目を浴びた。
このような目立つ警備は、テレビの生中継向けの演出という側面が大きかったかもしれない。だが、指導者となって以降、中国と韓国以外では初となる金正恩氏の外国訪問に際し、北朝鮮の政府関係者がいかなるハプニングも未然に防ごうと全力を挙げることは、ほぼ間違いないと、韓国体育大学校のKim Doo-hyun教授は言う。
「首脳会談の場所と時間はすでに発表されているので、金正恩の警備は他のどんな要人よりも厳しくなるだろう」と、韓国の大学で初の警備に関する専攻を創設したKim教授は指摘。「警備について、北朝鮮は米国よりも多くの要求をシンガポールに対して行ったと考えていいだろう」と付け加えた。
防弾仕様の車両に加えて、北朝鮮の警備担当者は、首脳会談会場の周辺に何重にも警備を張り巡らし、金正恩氏の車両が移動する際は、その車両から周辺の注意を逸らそうとするだろうと、Kim教授は予想した。
「この首脳会談は、いま世界で最重要の問題であり、地上、海上、そして上空で、前例のない規模の警備が敷かれるだろう」と、韓国の著名警備会社トップガードのChae Kyou-chir最高経営責任者(CEO)は話す。
「金正恩は、北朝鮮では神のような存在であり、一方、国外ではその統治姿勢が理由で敵意の対象になっている。それだけで、北朝鮮政府関係者は、常に安全を心配しなければならない」とChae氏は指摘した。
また、金委員長はは、自国から同行するシェフが準備した食事をとる可能性が高いと、Chae氏は付け加えた。