北が米朝蜜月を狙う理由──投資競争はすでに始まっている
ということは、昨年11月の宋濤訪朝以来、中朝間では水面下でかなり緊密な連絡があったことを示している。
したがって3月の全人代で決議された「国家国際発展合作署」という新部署は、この時点ですでに国連の経済制裁を潜り抜けた対北支援が計画されていたことになる。この「国家国際発展合作署」は、具体的には「発展途上国」に対するODA支援のための機構で、中国式の改革開放を海外において推し進めることが目的だ。
国連安保理による経済制裁は、安保理の常任理事国として、中国は遵守しなければならないが、「人道的な支援」は、そこから除外される。つまり、北朝鮮が完全な核放棄に至らなくても、「核放棄する作業段階に入った」という確信さえ得ることができれば、中国は直ちに北朝鮮を支援する構えなのである。
事実、アメリカのRadio Free Asia(RFA)は6月3日、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)貿易局の幹部が「やっぱり頼れるのは中国しかない」と言ったと報道している。
米朝首脳会談後、北が「1000年の宿敵」であったはずの中国を牽制するために(2000年から成る朝貢外交があったので、これ以上中国のコントロール下に置かれたくないために)、米朝蜜月を演じた場合、中国はチャイナ・マネーで北を惹きつけ、アメリカに対抗するつもりだ。
その準備をいま既に、着々と進めているのである。
ロシアも経済支援を準備
クリミア問題などでアメリカから経済制裁を受けたり、シリア問題でアメリカと対立するロシアは、米朝蜜月をさせまいと、北朝鮮に積極的に接近している。ロシアのラブロフ外相は5月31日に訪朝し、金正恩委員長と会談してプーチン大統領の親書を手渡したばかりだ。
4月29日にプーチン大統領は文在寅大統領と電話会談して、「ロシアの鉄道や天然ガス、電力などが朝鮮半島を経てシベリアに連結すれば、朝鮮半島の安定と繁栄に貢献するだろう」として、露朝韓3か国のインフラや経済協力の重要性を強調している。
ラブロフ外相に託した親書には、経済協力だけでなく、9月11日にロシアのウラジオストクで開催される国際会議「東方経済フォーラム」に金正恩委員長を賓客として招きたいという趣旨のことが書いてあるそうだ。