交渉は無駄と悟った?──トランプが米朝首脳会談を中止した理由
(3)トランプ政権内の強硬派から圧力があった
今年3月、トランプは政権をよりタカ派に向かわせる閣僚人事を行った。まずは国務長官をレックス・ティラーソンから前CIA長官のマイク・ポンペオに交替。コンドリーザ・ライス元国務長官ら多くの有識者が、ティラーソンは困難な米朝交渉の進捗に貢献していたと評価していた。またトランプは、国家安全保障担当の大統領補佐官をH・R・マクマスターからジョン・ボルトンに交替させた。ボルトンは北朝鮮に対して「リビア方式」(核開発を完全に放棄した後に制裁を解除する)の適用を主張し、米朝関係についても首脳会談がなくなれば軍事行動が取れるのに、などと言ってきた。
(4)すでに北朝鮮から十分な譲歩を勝ち取ったと思った
会談中止は、北朝鮮・北東部にある豊渓里の核実験場を爆破した直後に発表された。実験場はいまだに使用可能だという報告もあるが、金正恩は表面的には、核実験場を破壊し核実験を中止するという4月の南北首脳会談での約束を実行したことになる(長距離弾道ミサイルの発射実験を中止する、とも約束した)。核実験場が「破壊された」現在、トランプは一定の目標を達成したと感じたのかもしれない。
過去のトラウマ
(5)首脳会談をしてもアメリカが「明確な勝者」になれそうにない
トランプは4月、もし米朝首脳会談が「実りある」ものでなければ「謹んで席を立つ」つもりだと語った。公式には認めていないが、米朝双方は会談に向けていくつかの譲歩を申し出たようだ。アメリカは韓国との合同軍事演習に原子力潜水艦を投入するのを控えた。北朝鮮は核実験を停止し、豊渓里の核実験場を爆破して、拘束していたアメリカ人3人を解放した。
過去の米政権は、北朝鮮に相当の譲歩を重ねた末に核開発を放棄させるのを失敗している。金正恩が抜け目のない政治指導者だとわかった今、トランプは交渉で説得することを諦めたのかもしれない。
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