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アングル:東証の市場再編、迫る経過措置切れ 投資機会に虎視眈々

2024年11月27日(水)14時37分

 11月27日、東証による市場区分の見直しに伴う「経過措置」の期限が2025年3月に迫っている。都内の株価ボード前で2020年10月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Hiroko Hamada

[東京 27日 ロイター] - 東証による市場区分の見直しに伴う「経過措置」の期限が2025年3月に迫っている。その後、1年の猶予期間があるとはいえ、一部の企業にとっては、上場廃止も現実味を帯びてくる。株式市場では、対象企業を巡り株式公開買い付け(TOB)やマネジメント・バイアウト(MBO)など様々なシナリオが取り沙汰されており、短期的な収益機会になり得るとして関心が高まっている。

東証は22年4月に市場区分を見直し、プライム、スタンダード、グロースの3市場へ移行した。11月15日時点では、上場維持基準を満たさず経過措置の対象となっている企業がプライムで65社、スタンダードで150社、グロースで47社の計262社ある。

これらの企業には、25年3月1日以降、最初に到来する基準日(決算期末)から本来の上場維持基準が適用される。基準に抵触し続けた場合、1年の改善期間後、監理銘柄・整理銘柄に指定され、上場廃止となる。

<経過措置切れカウントダウン>

経過措置の対象企業は、基準に適合するための改善策を続ける、上場維持基準が比較的緩いほかの市場へ移行する、あるいは単独での上場維持は諦めてほかの手段を模索する、などの選択を迫られている。

株価が割安と判断される企業に対しては、投資ファンドや他社がTOBを仕掛けたり、親会社が子会社を完全子会社化するためにTOBを行う動きも想定される。

期限までに適合できないケースに備えた対応の検討状況を東証が調査したところ、「既に検討している」と回答したのは8月19日時点で9%(84社)にとどまった。一方、41%(90社)は「現時点で検討予定はない」と回答。上場廃止へのプロセスをたどるリスクを抱えた企業は少なくない。

<TOB増の思惑、短期投資にはチャンスか>

一般的にTOBに関しては、「流通株式時価総額や流通株式比率の基準を満たしていない企業が対象となりやすいのではないか」(T&Dアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネージャー、浪岡宏氏)という。

流通株式時価総額は「容易に引き上げられるものではない」(ニッセイ基礎研究所の金融研究部研究員、森下千鶴氏)という事情がある。

こうした中、経過措置の対象企業は、市場参加者にとって投資機会にもなり得る、との声が出ている。

フィリップ証券のアナリスト・笹木和弘氏は「上場維持基準を満たさない企業へのTOBが今後増えていくようなら、短期で利益を得たい個人投資家などにとっては好材料となりやすい」と話す。

TOBが実施される場合は、通常プレミアム分を上乗せした買い付け価格が設定されるケースが多い。

今年の例をみると、マンション管理大手の日本ハウズイングがゴールドマン・サックスと組み、MBOを通じて株式を非公開化した。

5月9日時点で流通株式比率の基準を満たしていなかったためで、会社側は、将来的な上場廃止により株主が株式の売却機会を失うリスクを回避することは合理的な選択と説明。TOB実施が発表された翌日、同社の株価はストップ高となった。

自社株TOBを発表し、株高になった事例もある。LINEヤフーは上場基準適合に向けて約1500億円を投じて発行済み株式総数の約5%の自社株をTOBすると発表。翌日は急落相場となった8月5日だったが、同社株には買いが先行した。

一方、市場降格は株価にネガティブに働くとみられている。 プライム上場のエイチームは10月29日、「上場維持基準の適合に向けた基本方針」を示し、プライム上場「死守」を目標とした上で、万が一不適合になった場合はスタンダード市場へ再上場することを公表した。これを受けた翌日の株価反応は1%超安だった。現在の株価は10月末に比べて戻り基調となっているが、ボックス圏での推移が継続している。

ニッセイ基礎研の森下氏は市場降格について一般論として、「期限までに企業価値を上げられなかったという評価につながり、将来的な上場廃止のリスクも意識されるため、売り需要につながる可能性がある」と話している。

<機関投資家は手控え姿勢> 機関投資家にとっては、全体として、経過措置銘柄を投資対象にするのは難しいとみられている。

大和総研の主任研究員、神尾篤史氏は「一般的な機関投資家は手掛けにくくなってしまう」という。機関投資家の場合は、投資判断の正当性を説明する必要があるためだ。 該当する企業の業績がⅤ字回復する期待があれば投資対象となることも考えられるが、機関投資家にとっては、上場廃止のリスクを負ってまで投資する理由付けとそのリスクを超えるリターンが求められている。

(浜田寛子 編集:橋本浩)

※以下は、親子上場している経過措置銘柄一覧

コード 企業名 市場 親会社

1429. 日本アクア プライム ひのきやグルー 流通株式比率未達

T プ

2653. イオン九州 スタンダード イオン 流通株式比率未達

T

3077. ホリイフードサービス スタンダード KK OUNH 流通株式時価総額未達

T

3223. エスエルディー スタンダード DDグループ 流通株式時価総額未達

T

3484. イノベーションホールディングス プライム クロップス 流通株式時価総額未達

T

3622. ネットイヤーグループ グロース NTTデータ 時価総額未達

T

4059. まぐまぐ スタンダード エアトリップ 流通株式時価総額未達

T

5025. マーキュリー グロース GAテクノロジ 流通株式時価総額未達

T ー

7450. サンデー スタンダード イオン 流通株式比率未達

T

7849. スターツ出版 スタンダード スターツ 流通株式比率未達

T

7878. 光・彩 スタンダード エスティオ 流通株式時価総額未達

T

8209. フレンドリー スタンダード ジョイフル 流通株式時価総額未達

T

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