最新記事

医療

空前の「がん治療薬」開発競争、投資家が味わうジレンマ

2018年5月15日(火)08時40分

新興企業などに資金を提供するシリコン・バレー・バンク(ロンドン)の生命科学責任者、ヌーマン・ヘイク氏は「競争が激しいということは、より慎重を期す必要があるということだ」と語る。

「バイオ技術における従来の投資テーマは、競争相手が少なく差別化され、価値を生み出す医薬品を見つけることだった。現在の状況は患者にとっては大いに恩恵があるが、問題は、競争優位性がどの程度長持ちするか、商業的な競争力がどの程度あるかだ」とヘイク氏は続けた。

トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想によると、がん免疫療法の売上高は2021年までに250億ドルを超える見通しで、年間1000億ドルのがん治療薬市場の中で最も急成長を遂げている分野だ。

医薬品企業の幹部は、その中で勝ち組となる療法の開発を目指しているが、競争の激しさを認識していないわけではない。

世界最大のがん治療薬企業であるロシュのセベリン・シュワン最高経営責任者(CEO)は「巨大な脱落者」が出てくると予想。仏サノフィの調査責任者Elias Zerhouni氏は先週アナリストに対し、複数の社が同時に開発を進めているため、各社とも研究・開発費を回収するまでの猶予期間が短くなるとの警戒感を示した。

非営利のキャンサー・リサーチ・インスティテュートのアイマン・シャラビ最高医薬品責任者も「技術革新のサイクルが大幅に短くなった」と語った。

(Ben Hirschler記者)

[ロンドン 2日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 2029年 火星の旅
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月20日号(5月13日発売)は「2029年 火星の旅」特集。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、中国小口輸入品の関税引き下げ 民間業者通じた小

ワールド

ゼレンスキー氏、プーチン氏に直接会談迫る 「怖いの

ワールド

ウクライナ、米との鉱物資源協定実施へ手続き完了 投

ビジネス

ユナイテッドヘルスCEO交代、通期見通し停止 株価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中