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テロ時代の海外旅行

日本人は旅行が下手だ(テロ時代の海外旅行術)

2018年4月24日(火)07時00分
森田優介(本誌記者)

では海外旅行のリスクに備えるには、どんな準備をして、どんな対策を取るべきか。旅行会社のパンフレットやウェブサイトを見ても、安全性に関する情報はあまり載っていない。クチコミサイトからSNS、個人ブログまでネットには情報があふれているが、どう判断すればいいかが難しい。

情報収集に関してまずよりどころにできるのは、外務省の海外安全ホームページだ。国ごとに危険情報やテロ・誘拐情勢、医療事情、安全の手引を詳述。危険情報は、エリア・都市別にレベル1(十分注意してください)からレベル4(退避勧告)まで4段階に分類している。旅慣れた人を中心に「厳し過ぎる」「過保護過ぎる」といった声もあるが、参考にはなる。

外務省は、渡航先の安全情報などをメールで配信する「たびレジ」という登録サービスも提供している。だが年間1800万人が海外渡航する時代に、累計登録者数は355万人弱にとどまる。本誌がツイッターでアンケートを取ったところ、「使ったことがある」は21%。「知っているが使ったことはない」が24%、「知らない/聞いたことがない」は半数近くに上った(回答数478)。正式な調査ではないが、十分に活用されていないことがうかがわれる。

世界には、一生に一度は訪れてみたいと思わせる魅力的な場所がたくさんある。世界経済フォーラムは「観光競争力ランキング」(下右表)を2年に1度発表しているが、これは安全性も指標に入れた上での評価で、危なくない旅行先選びに役立つはずだ。本特集ではさらに、安全性により重きを置いた経済平和研究所の「世界平和度指数ランキング」(下左表)と組み合わせ、日本人訪問者数の統計も加えて地図にした(本誌24~25ページ)。観光大国だが意外に治安に不安がある国、日本人はあまり訪れていないが安全で魅力ある国などが見えてくる。

日本人はかつて団体ツアーで世界を席巻した。その役割は中国人に譲ったが、旅行者としてまだ成熟していないのではないか。今はパスポートとクレジットカード、スマートフォンがあればどこへでも便利に旅行できる時代だ。足りないのはリスクに対する意識と対策、「正しく怖がる」姿勢だけ。それさえあれば、日本人はもっと旅を楽しめるようになる。

※本特集は2018年4月18日時点の外務省海外安全ホームページの情報や独自の取材を基に掲載しています。旅行に際しては安全に関する情報の収集に努め、ご自身の判断と責任において行動してください。


18050108cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版4月24日発売号(2018年5月1/8日号)は「どこが危なくない? テロ時代の海外旅行」特集。あの観光地は大丈夫?/安全度マップ/身を守るコツ......「ゼロリスク」を求め過ぎる日本人のための海外旅行ガイドを作成した。この記事は特集より>

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