最新記事

台湾

緊張のなか台湾が軍事演習──中国が攻めてきたら7割が「戦う」

2018年4月25日(水)16時16分
ブレンダン・コール

2017年の漢光演習で火を噴く台湾のM60A3戦車 Tyrone Siu-REUTERS

<台湾近海での恫喝的な軍事演習を増やしている中国に対し、台湾も「中国軍の撃退」を想定した演習を始める>

中国との緊張が高まる中、台湾が4月30日からの軍事演習で「侵略勢力の撃退」を想定したシミュレーションを行うことがわかった。

ロイターの報道によると、台湾政府が実施するこの一連の軍事演習には、民間企業が初めて参加し、空軍基地滑走路の緊急補修演習を行うほか、民間企業が操作するドローンも参加するという。

この「漢光(Han Kuang)」演習は毎年恒例で、2018年の演習は4月30日から、実弾演習は6月4日から実施される。ただし、仮想敵国として中国の名前は挙げておらず、「台湾に侵略する敵対勢力」との記述があるのみだ。今回は、実弾射撃を伴う実動演習に加え、「海岸線での敵軍撃退」演習も行われる。

民間も参加して総力戦

実弾演習は6月4日~8日までの日程で実施され、台湾の軍事演習としては初めて、他の政府機関や民間が参加する。沿岸警備隊や、航空救難任務を担当する空中勤務総隊との合同演習が行われるほか、民間企業が操作するドローンが戦場の状況監視を補助する。さらに、民間の建設会社が、清泉崗(せいせんこう)空軍基地で滑走路の緊急修理演習を実施する。

台湾国防部は、「今回の演習では、民間資源も一体となって軍事演習をサポートする」とコメントしている。

台湾は2018年1月にも、台湾東部の花蓮港(かれんこう)で、偵察機やF-16ジェット戦闘機が参加する軍事演習を行った。

中国は台湾を国家として認めておらず、中国の不可分の領土だと主張している。とくに2016年に台湾独立推進派の民主進歩党から蔡英文が総統に選出されて以降、中国の示威行動は激しさを増している。

中国は2017年に入り、台湾付近での軍事演習を増やしており、台湾の領海および領空を侵犯することもしばしば。また、4月18日には、台湾海峡で大規模な軍事演習を実施した。

台北を拠点とするシンクタンク、国家政策研究財団の掲仲は、中国政府のこうした行動について、台湾に対する心理作戦だと見る。

掲はシンガポールのニュース専門チャンネル「チャンネル・ニュース・アジア」に対して、「中国政府はこの1~2年、あまり費用がかからない小規模かつ限定的な軍事演習を定期的に行って心理戦を仕掛けている」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

パウエル米FRB議長は模範的なセントラルバンカー=

ビジネス

ルーブル、対ドルで上昇 年初から40%値上がり

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介断念も 進展なければ

ビジネス

りそな銀、21年ぶりに米拠点開設へ 現地進出目指す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中