最新記事

北欧

フェイスブックの炎上と映画が発端でノルウェー政権解体の危機

2018年3月20日(火)14時30分
鐙麻樹(ノルウェー在住ジャーナリスト&写真家)

右翼ポピュリスト政党「進歩党」のシルヴィ・リストハウグ法務・危機管理・移民大臣 Asaki Abumi

Facebook投稿が原因で、政権が解体するかもしれない。SNS時代ならではのありえない話が、ノルウェー国会で現実味を増している。

ノルウェーには、過激な発言で計算された炎上戦略をする政治家がいる。

右翼ポピュリスト政党「進歩党」のシルヴィ・リストハウグ法務・危機管理・移民大臣だ。

asakiabumi20180320125401.jpg
進歩党の総会でスピーチするリストハウグ氏 Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの「また炎上してる」人

進歩党の「プリンセス」と称えられる、次期党首候補だ。

過激な言動、卓越されたメディア操作、ナショナリズムファンが集うFacebook個人ページを使い、ノルウェーの世論を二分させている。ワシントン・ポスト紙には「ノルウェー版ドナルド・トランプ」とも名指しされたことがある。

昨年、総選挙で中道右派政権が継続することになったばかり......のはずが

ノルウェーは、2013年から保守派陣営が政権を担っている。現在は、アーナ・ソールバルグ首相率いる保守党、進歩党、自由党による連立政権で、キリスト教民主党が閣外協力をしている。

4年毎におこなわれる国政選挙で昨年あらためて勝利したばかりのソールバルグ政権。今年の1月には、内閣改造を発表し、新しい船出となる「はず」だった。

asakiabumi20180320125402.jpg
今年の1月中旬に王宮前で発表された新内閣メンバー Photo:Asaki Abumi

政権の中で、最も物議を醸すリストハウグ大臣。

進歩党は、移民や難民の受け入れに懐疑的な政党として知られている。だが、政策においては、実は右派左派では、大きな変わりはないともされる。違いは、「話し方」だ。

3月9日に何が起きたのか

問題のFacebook投稿が起きたのは、3月9日。


労働党は、国家の安全よりも、テロリストの権利が大事だと主張している。『いいね!』ボタンを押して、この投稿をシェアしよう

この文章には、1枚の画像がついていた。2012年に撮影されたソマリアを拠点とするイスラム過激派アルシャバブの戦闘員の写真だ(以下)。

sylvilithaugfb09032018.jpg

この投稿が、「この日」にされたことには、大きな問題があった。

ノルウェーのテロ事件をテーマにした映画『U-July 22』が公開初日を迎えていたのだ。筆者も、この日はこの映画を見ていたので、大臣の投稿を見て、唖然としたのを覚えている。

77人が殺されたテロが映画化

asakiabumi20180320125403.jpg
筆者が訪問した時のウトヤ島、労働党青年部の夏合宿 Photo:Asaki Abumi

2011年7月22日。アンネシュ・ベーリング・ブレイビクによって、77人の命が奪われた。政府庁舎の爆破で8人、オスロ郊外のウトヤ島での銃乱射事件で69人が死亡した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中