最新記事

ロシア

プーチンの差し金?亡命ロシア人の不審死が止まらない

2018年3月14日(水)18時45分
デービッド・ブレナン

3月18日の大統領選挙に向けたプーチン陣営の広告(ロシア南部スタヴロポリ、3月5日) Eduard Korniyenko-REUTERS

<プーチンに批判的だった亡命ロシア人がまたイギリスで死亡した。黒幕は大統領選を控えたプーチンなのか>

プーチン大統領を批判するロシア人亡命者ニコライ・グルシュコフ(68)が、ロンドンの自宅で不審死を遂げた。英ロのメディアが3月13日に報じた。

グルシュコフは、オリガルヒ(新興財閥)の大富豪ボリス・ベレゾフスキーの親しい友人だった。ガーディアン紙によれば、死因は明らかになっていない。

ロシアとイギリスの二重スパイだったセルゲイ・スクリパリとその娘が、薬物で意識不明になった3月4日の事件をきっかけに、ロシアと西側諸国の間では緊張が高まっている。

スクリパリ父娘は現在も重体だが、その原因が旧ソ連軍が開発した神経剤「ノビチョク」であったことが判明。この事件の背後にロシアがいる可能性は非常に高いとテリーザ・メイ英首相は語った。

グルシュコフは1990年代にロシアの国営航空会社アエロフロートとベレゾフスキー所有の自動車会社ロゴワズの幹部を勤めていた。1999年にプーチン大統領と不仲になり、マネーロンダリングと詐欺の罪で5年間投獄された。

2004年に釈放された グルシュコフは、イギリスに逃げた。だが2006年に再び詐欺罪で執行猶予2年の判決が下った。彼は政治的亡命者として保護され、イギリスに留まった。

だが亡命後も、ロシア政府は グルシュコフを追い続けた。17年にはロシアの裁判所が1990年代にアエロフロートから1億2200万ドルを横領した罪で有罪判決を下し、懲役8年と100万ルーブル(1万7590ドル)の罰金刑を宣告した。

ベレゾフスキー自殺説に反発

ベレゾフスキーは2011年にプーチンと親しいオリガルヒのロマン・アブラモビッチを訴え、 グルシュコフは裁判所に証拠を提示した。裁判官はこの訴えを退け、ベレゾフスキーを「意図的に不誠実」と非難した。ベレゾフスキーは公的生活を退き、 グルシュコフはこの決定に対して正式に不服を申し立てた。

イギリス亡命中、ベレゾフスキーは定期的にプーチンを批判し、2005年にBBCの取材でこう語った。「プーチンが2008年の選挙で生き延びるチャンスはないと確信している。私はプーチン政権の継続を阻止するために、全力を尽くしている。そしてプーチン退陣後、ロシアに帰ることを考えている」

ベレゾフスキーは2013年、イギリスの元妻の家で首を吊って死亡した。争った形跡はみられず、警察は自殺したと考えた。だが検死官は死因不明と記録した。ベレゾフスキーの友人やロシア人亡命者は自殺説には懐疑的だった。

グルシュコフはベレゾフスキー死亡直後、ガーディアン紙に対して、「ボリスは殺されたと確信している。私はマスコミの報道とはかなり違う情報を知っている」と語った。

「ボリスは窒息死した。自分でやったか、誰かがやったか。でも自殺だったとは思わない」と、彼は説明した。また2006年に放射性物質ポロニウムで暗殺されたアレクサンドル・リトビネンコの事件にも言及した。「ロシア人亡命者の死が多すぎる」と、当時グルシュコフは語っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも43人死

ワールド

ウクライナ、中国企業3社を制裁リストに追加 ミサイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    トランプに弱腰の民主党で、怒れる若手が仕掛ける現…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中