トランプ政権暴露本、この騒動の最大の敗者は誰だ
ウルフは『炎と怒り』にこう書いている。「バノンはさほどビジョンのある起業家でもビジネスの才があるわけでもない、要するにカネが欲しかった――つまりバカどもをだましてカネを吸い上げたかった。彼にとって、マーサー親子は絶好のカモだった......」
ここまで言われたら関係断絶は当然のこと。1月5日にはトランプもそれを追認して、こうツイートしている。「マーサー家は最近、情報漏洩屋のうすのろスティーブ・バノンを切り捨てた。賢いぞ!」
共和党内でのバノンの影響力は大きそうに見えたから、いよいよ共和党が「バノン派」と「トランプ+マーサー家派」に分裂するのかという観測も、当初はあった。しかし、どうやら共和党の面々はあっさりとマーサー家の例に倣ったようだ。
「誰に忠誠を誓うかということになれば、共和党の内部にも支持者の間にも迷いはないと思う」と言うのは、共和党の選挙参謀を務めるジェシカ・プラウドだ。「大統領は大統領だ。この戦いで大統領が仲間を失うような事態は考えられない」
「トランプ大統領は、まぎれもない共和党のトップだ」と、政治コンサルタントでトランプ再選キャンペーンの顧問団に名を連ねるハーラン・ヒルも言う。「共和党の内部にいるのはトランプ派と、彼を絶対に支持しない一派のみ。選択の余地はない。マーサー家は確実にトランプ派で、今のバノンがどちらかは分からない」
バノン系の候補たちは大慌て
バノン失脚の影響を受ける人がいるとすれば、彼の推薦で今秋の中間選挙に立候補する準備を進めてきた政治家だろう。その一部は既にバノンと距離を置き始めている。
例えば、ニューヨーク州で下院議席の奪還を狙うマイケル・グリム。昨年10月には本誌に「私たちは確実にバノンと協力していく。彼も私の再選を楽しみにしている」と語っていた。
しかしバノン失脚を受けて、彼は次のようにツイートした。「マイケル・ウルフが引用したスティーブ・バノンの発言を強く非難する。大統領の家族に対する根拠のない、極めて憂慮すべき攻撃だ。私はこの国の最高司令官を全面的に支持している」