同盟よりも南北融和を優先? 韓国文政権は南北交渉のベテラン揃い
温かい心
1980年代の韓国軍事政権時代における学生活動家の多くは、北朝鮮の国家理念である主体(チュチェ)思想を学び、共感すらしていた。これは、マルクス主義と極端な自主性を尊ぶ国家主義を組み合わせた政治思想で、金日成主席が展開したものだ。
「北朝鮮を訪れて自分の目で確認した今では、われわれもずっと懐疑的に物事を見ている」と、 元活動家で今は文大統領の与党「共に民主党」に所属する国会議員、李仁栄(イ・インヨン)氏は言う。
「われわれは、言われているような北朝鮮シンパではない。だが平和に向けて、他の人より温かい心と多くの忍耐があるのかもしれない」
人懐こい性格と秘書室長としての調整スキルで知られる任氏は、表舞台は避けつつも、政策立案から青瓦台の人事まで幅広い事案に深く関与している。
文大統領が、戦争に反対し、北朝鮮が核・ミサイル実験をやめれば対話に復帰する意思がある、などと述べた重要記念日などのスピーチは、任氏が監修した。
対話を求めて
だが政府高官によれば、任氏に対する保守派の批判を踏まえ、特使は徐長官か趙統一相の起用に傾いているという。
「多くの名前が取りざたされているが、徐氏はエキスパートで、最善の選択肢だ」と、元統一相で、南北関係について文大統領に定期的に助言している丁世鉉氏は言う。
「南北関係では、北朝鮮の言葉や、彼らの話し方、内部原理を理解することが重要だ」
徐長官は、2000年と2007年の南北首脳会談に先駆けて行われた一連の協議をそれぞれ主導している。情報機関トップとして、また文大統領は当時の盧武鉉大統領の秘書室長として、同氏は2007年の首脳会談実現に重要な役割を果たした。
大統領府は任氏について、秘書室長として期待される「自然な役割」を務めているとしたが、詳細には言及しなかった。
だが、五輪関連のデタントの舞台にまんべんなく登場した任氏の存在感は、大統領府の昼食会にしか招かれなかった鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長や、どこにも見当たらなかった他の外交や国防高官と比べて際立っている。
文大統領は、学者や過去のリベラル政権の元高官らを、外相を含めた重要外交ポストに指名している。
「統一省が今の展開を主導するのは自然なことだ。青瓦台が、これまでいつもそうだったように、全体を監督している」と、外務省高官はロイターに語った。
「われわれの仕事は、北朝鮮と米国が対話できる状況を築くことだ。道のりは長く厳しいが、そこがわれわれが役割を果たす場所だ」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ソウル 15日 ロイター]

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