最新記事

イタリア

あのベルルスコーニが再び政局の中心に

2018年1月13日(土)15時30分
ビル・エモット(英エコノミスト誌元編集長)

政治家としてはもう終わったと思われていた男が返り咲きするかもしれない Guglielmo Mangiapane-REUTERS

<予測のつかない3月の総選挙に向けて、中道右派連合を率いるお騒がせ元首相に追い風が>

イタリア総選挙の実施日が3月4日に決まった。どの政党も過半数を獲得できない見込みで結果がどうなるかは不透明だが、1つだけ確実なことがある――選挙戦の成り行きのカギを握るキングメーカーは、ほかならぬ81歳のシルビオ・ベルルスコーニということだ。

そう、首相を4期務め、「ブンガブンガパーティー」の言葉を有名にしたあの男だ。11年11月に首相を辞任したベルルスコーニは13年に脱税で有罪となっており、公職に就くことはできない。それでも彼が率いる中道右派連合は、総選挙に向けていま最も勢いがある。

13年2月の前回総選挙以降、イタリアの舵を取ってきたのは中道左派の民主党を中心とした連立政権だった。失業率は11%以上と依然として高いが(若年層では約35%)、過去10年以上で最も急速な経済成長を遂げている。ただしそれも民主党の助けにはならない。

党首は、若くカリスマ性のあるマッテオ・レンツィ。14年2月~16年12月に首相を務めた際は、政界の既存勢力に挑む「壊し屋」といわれた。だが結局は称賛よりも批判を集めて終わり、目立った成果といえば硬直した労働市場の改革ぐらい。有権者受けするものではない。党の支持率は14年をピークに、20~25%に低下している。

支持率26~29%ほどでトップを走るのは、ポピュリスト政党の「五つ星運動」だ。コメディアンのベッペ・グリッロが09年に設立した新興政党で、前回総選挙で第2党に躍進した。同党所属のローマ市長の手腕には疑問符が付いているものの、党の人気は相変わらず高い。

小選挙区は五つ星に不利

五つ星にとっての難題は、議会で過半数を確保するにはおよそ40%の得票が必要であること。昨年10月の選挙法改正でこれまでの比例代表制から、3分の2を比例代表、3分の1を小選挙区で選出する形に変わった。五つ星は主要政党では唯一、他政党との連立を拒否しており、小選挙区で勝てる見込みはない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英仏・ウクライナの軍トップ、数日内に会合へ=英報道

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

米利下げ時期「物価動向次第」、関税の影響懸念=リッ

ワールド

再送-日鉄副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中