映画関係者が興行収入をかけ契約交渉する見本市AFMとは?
交渉の場では、各バイヤーが様々な交渉テクニックを駆使する。韓国のバイヤーはその最後の価格交渉ミーティングにはスタッフを同席させず、自分のアシスタントにも"秘技"を見せないといわれている。
ミーティングは各会社のブースで行われるが、AFMでは、開催期間中、事務局側が会場となるホテルをまるごと借り切っていて、各客室がミーティング会場となる。客室内のベッドやテーブルが全て取り除かれ会議室に早変わりするのだ。室内はテーブルやいす、たまにソファーなどが置かれTVが設置されている。映画の予告編をバイヤーに見せるためだ。また、ポスターやチラシなどが置かれ各社自社の映画の魅力を最大限にアピールしている。
ミーティング内容は完全秘密だといったものの、どの映画がいくらで売れた、あの映画が試写会で人気だったなどの情報は、毎朝会場で無料配布されているVariety/Hollywood Reporter/Screen Internationalの映画業界誌3社が毎日発行するAFM特別号から知ることができる。毎朝雑誌を手にコーヒーを飲みながら、昨日の動向をチェックするバイヤーの姿を会場ロビーで見ることができるだろう。
ちなみに、このマーケット期間中、周囲の映画館は関係者試写用に押さえられている。関係者バッジを持った者だけが入場可能で、新作映画やトレーラーなどの試写を観られる。一般的に映画館では考えられないことだが、この試写中は途中入退場はもちろん、携帯電話での通話も可能だ。もしも、今試写している映画を購入したい場合、誰よりも早く担当者に連絡をして買い付けなければならないからだ。
さて今年のAFMはどんな様子だったのだろうか? 映画売買にもデジタルの波が押し寄せている。つい15年前までは、まだVHSテープでのやり取りだった。バイヤーはVHSテープの映画サンプルが何十本も入った重いカバンを下げてミーティング会場を歩き回っていたという。その後DVDとなり、今やストリーミングでのやり取りを行う会社も多い。また、映画上映の素材もフィルムを何十巻、何百巻の購入から、今は外付けハードディスクたった1個で済んでしまう。
AFMでも、今年からオンラインスクリーニング(ネットでの試写)を開始した。AFM専用のプラットフォーム「AFM Screenings On Demand」を提供しセラー会社はAFMが始まる1週間前から作品の放映が可能になり、アメリカで実際に会ってミーティングする際にはすでに作品の試写を観てもらっいて、値段交渉から始めることができるというわけだ。セキュリティーも万全だとのことだが、やはり公開前のこの世にまだ出ていない作品なだけに、この部分はセラー側も神経質になっているようだ。
また、今年会場で目立ったのは中華圏からの参加者だった。全体でも昨年から参加者が6%UPした今年のAFMだったが、そのうち中国/台湾からの参加者は35%を占めた。自国内の制作だけでなく、ハリウッドの大作への出資などが目立つ中国。今後も勢いは続きそうだ。