文在寅政権下に噴き出した李明博時代のウミ
朝鮮半島大運河は、李が選挙公約に掲げたプロジェクトの1つ。国内の河川をつないで、メガコンテナが通過できる幅に拡張し、最終的に朝鮮半島を南北に貫く大運河を建設するという壮大な構想だった。
しかし莫大なコストがかかることもあり、当初からプロジェクトは激しい反対に遭い、最終的に白紙化された。しかし李は、大統領選で自分を応援してくれた財閥系ゼネコンに見返りを与える必要に迫られ、代替プロジェクトとして4大河川整備事業を打ち出した――。これが現在では定説となっている。
政府の会計検査を行う韓国監査院は13年、4大河川整備事業は李の直接的かつ個人的な指示で起案・実施されたとの結論を下した。このプロジェクトを推進していたのは、政権内部でも李だけだったともされる。
息を吹き返した株問題
それでもプロジェクトを実現に持ち込むため、李は事実と異なる実施理由も並べた。例えば、「韓国は国連の水不足国に指定されている」というもの。だが、国連にそのような指定は存在しない。このため文は今年5月、4大河川整備事業の政策決定や実施の過程について監査を命じた(結果はまだ出ていない)。
そもそも李は、大統領就任前から不祥事まみれだった。なかでも悪名高いのがBBK事件だ。
李は、92年に実業界から政界に転じたものの、公職選挙法違反が明らかになり、98年に国会議員を一度辞任。米ジョージ・ワシントン大学客員研究員に転じた。このとき在米韓国人の金敬俊(キム・ギョンジュン)が代表を務める投資顧問会社BBKと関係を深めた。
李は、金が韓国に複数のペーパーカンパニーを設立して外国人投資家の買収対象になっているという虚偽情報を流し、株価をつり上げるのを手伝ったとされる。買収の噂により株価は急騰し、金らは380億ウォン(約38億円)を子会社(のちに李と金が所有するペーパー会社であることが発覚)に送金して横領したとされる。
これにより損失を被った韓国の投資家たちが李を刑事告発したが、「証拠不十分」として立件されなかった。しかし李が出馬した07年の大統領選直前に疑惑が再浮上して、李はピンチに陥りかけた。
アメリカから帰国した金はすぐに逮捕され、起訴された。このとき李がBBKなど横領に関与した企業を一部所有していた証拠も見つかったが、李が大統領選に勝利すると、問題はうやむやに。その一方で金は、8年の懲役刑を言い渡された。
今年3月に刑期を終えてアメリカに戻った金は、BBKへの李の関与を立証するために協力を惜しまないと言う。「BBK事件の犯人は私だと考えられているが、実際は違う。私はこの事件絡みの多くの訴訟に勝ってきた。悪いのは当時の与党であり、その恩恵を得たのは李明博政権だ」
韓国検察は11月に入り、BBK事件の再捜査を正式に決めた。捜査の焦点は李の関与だ。どうやら李が朴に続き、ダーティーな過去について刑事責任を問われる大統領経験者になる可能性は、かなり高そうだ。
From thediplomat.com
[2017年11月28日号掲載]