最新記事

中東

中東を制するのはサウジではなくイラン

2017年11月22日(水)20時00分
ジョナサン・スパイヤー

サウジアラビアが失敗から教訓を学び、中東でのイランの影響力を押し戻せる気配もない。ムハンマド・ビン・サルマンが皇太子に就いてからも、アラブ世界に強力な代理人を打ち立てるのは未だに苦手だし、軍事力増強のための手も打っていない。これまでずっと欠けていた「ハード・パワー」は今も欠けたままだ。イランの影響力を押し戻せるとしたら、それはサウジアラビアでもアラブ首長国連邦(UAE)でもなく、アメリカの関与だ。レバノンの場合は、おそらくイスラエルだろう。

アメリカ政府やイスラエル政府がそこまでやるかどうかはわからない。だが、ジェームズ・マティス米国防長官は先週、アメリカはシリア東部に留まると匂わせたし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相もシリアで軍事作戦を続行すると述べている。

イランはサウジアラビアに対して優れているが、イラン自身には明らかな弱点があることも忘れてはならない。サウジアラビアとライバル関係にあるすべての国のなかで、イランが同盟関係を長く維持できたのはシーア派など一部の国だけだ。スンニ派、とくにスンニ派のアラブ人は、イランを信用しないし協力したがらない。イラク政界のシーア派の一部もイランからの指示は受けたがらない。代理戦争を通じてイランの影響力を削ごうとする抜け目ない国があれば、仲間を見つけるのは難しくないだろう。ただ、サウジアラビアがそうした国の1つに入るかどうかは怪しいだけだ。

モハンマド皇太子は少なくとも、イランとその仲間に対抗したいという意志は見せている。つまり、戦いの火ぶたは切って落とされたのだ。サウジアラビアの勝敗は、アメリカをはじめとする同盟国が協力してくれるかどうかと、代理戦争のノウハウをどれだけ速く学習できるかにかかっている。

(翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

投機含め為替市場の動向憂慮、行き過ぎた動きには適切

ビジネス

ロシア中銀、年明けルーブル支援を60%減額へ 金融

ワールド

公債依存度24.8%に低下、歳出は過去最大115兆

ワールド

欧州エネルギー大手、24年は気候変動対策を後退 短
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 8
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中