最新記事

香港

アグネス・チョウ独占インタビュー「日本の選挙に興味ある」

2017年11月13日(月)16時49分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

takaguchi171113-2.jpg

「香港衆志」(デモシスト)の集会で演説する周庭(写真提供:周庭)

「憲法を自由に解釈できるのは問題だ」

――基本法は香港の小憲法とも言われている。

もし憲法だとすれば、解釈権によって中国が内容を変更できること自体がおかしいのではないでしょうか。中国政府、香港政府は共に法律を尊重していない。憲法は自由に変えていいものではないはずです。憲法9条を変更するのではなく追記することで変えようとしている日本も、似たような課題に直面しているのかもしれませんが。

――香港の法律では3カ月以上の禁固刑を受けた場合、被選挙権が5年間にわたり停止される。黄と羅が出馬できないとなると、デモシストの活動は困難になるのではないか。また羅の議員資格取り消しに伴い、議員給与及び経費を返還する必要があるのでは?

2人の量刑については上訴審で最終決定するのでまだ未確定です。しかし、二審判決を覆すことはおそらく難しいでしょう。今後の活動については摸索しているところですが、香港の「自決」を求めた活動は続けていきます。

現在は林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が導入しようとしている愛国教育運動、「一地両検」(広州・香港間高速鉄道の香港西九龍駅で、香港・中国双方の出入国審査を一括で行うプラン。西九龍駅は中国本土の法律が適用される区画になるため主権の侵害だとして野党は抗議している)に対する抗議運動を続けています。

議員給与および経費返還については、まだ動きはありません。香港政府が返還を求めるには立法会の議決が必要になります。ただ、失職するまでは議員として活動を続けていたので、もし返還要求があったとしても不当だと思います。そのときは法的手段で戦うことになるでしょう。

来年3月には失職した議員の補選もあります。ただデモシストとして候補者を立てるかどうかは決めていません。立法会選挙は1つの区から多くの当選者が出る大選挙区制で、野党は各自候補者を立てました。当落ラインは2万票程度。一方、補選の当選者は1人、当落ラインは20万票程度になります。通常とは全く違う選挙戦を行う必要があります。なにより野党が候補を一本化しなければ勝ち目はない。団結する必要がありますが、難しい課題です。

日本の衆議院選挙でも野党候補の一本化はできなかったですよね。民進党が希望の党と立憲民主党に分かれて、思想的には分かりやすくなったのではないかと思いましたが。日本の選挙にすごく興味があります。一度見に行きたいし、香港との違いも知りたいですね。

そういえば、立憲民主党の枝野幸男代表がアイドルグループ、欅坂46の『不協和音』をカラオケで歌うとニュースになっていました。私も『不協和音』、それに『サイレントマジョリティー』という曲が好きです。社会的メッセージを盛り込んだアイドルソングは異例だから。日本でこうした楽曲が流行した背景についても知りたいです。

また、日本の皆さんにも香港のことを知ってもらいたい。日本人にとって民主主義は当たり前かもしれませんが、香港では逮捕されるのを覚悟してまで民主主義を獲得するため戦っている人がいる。香港について知ることで、民主主義の大切さも分かるのではないかと思います。

【参考記事】若者たちの「30年戦略」と行政長官選挙にみる香港の苦境

[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝 』(星海社新書)。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ、鉱物資源協定まだ署名せず トランプ氏「

ビジネス

中国人民銀総裁、米の「関税の乱用」を批判 世界金融

ワールド

米医薬品関税で年間510億ドルのコスト増、業界団体

ワールド

英米財務相が会談、「両国の国益にかなう」貿易協定の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中