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アメリカ社会癌の死亡率は下がったが、銃犯罪と薬物乱用がアメリカ国民の生命を脅かしている
Brian Snyder-REUTERS
米国において、銃犯罪と薬物乱用は、深刻な社会問題であるのみならず、多くの米国人の生命を脅かす要因となっていることが、このほど公表された統計データから明らかとなった。
薬物の過剰摂取と銃暴力の死亡率が上昇
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の下部組織である国立衛生統計センター(NCHS)では、2017年9月17日時点で受理したすべての死亡記録をもとに、心臓病やがんをはじめとする15の死因に加え、薬物の過剰摂取や銃関連の事件・事故なども網羅して死亡率を推計し、「主な死因に関する四半期別暫定統計(2017年第2四半期)」をまとめた。
これによると、2017年第2四半期までの1年間で、主な死因のひとつであるがんによる死亡率は下がったものの、全体の死亡率は上昇。とりわけ、薬物の過剰摂取と銃暴力による死亡率が、2015年以来、上昇していることがわかった。
鎮痛剤を過剰摂取する高齢者、オピオイドを闇取引する若い世代
米国で薬物の過剰摂取により死亡した人の割合は、2015年第1四半期時点で1万人あたり15.1人であったのに対し、2016年第4四半期には19.7人にまで増加。老若男女問わず、多くの人々の健康を脅かす要因となっていることも注視すべきポイントだ。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」の取材に応じた米ブランダイス大学のアンドリュー・コロドニー博士によると、米国の薬物依存者は、鎮痛剤を過剰摂取する高齢者と、闇取引でやりとりされているオピオイド(アヘン様合成麻酔薬)を過剰摂取する若い世代との2つのグループに大別されるという。現政権もこの事態を重く見ており、ドナルド・トランプ大統領は、2017年10月26日、オピオイドの乱用が全米に拡大していることを受け、公衆衛生の非常事態を宣言した。
銃に関する研究活動への予算は大幅カット
一方、銃に関連する死亡は1993年をピークに減少傾向であったが、直近2年では増加。その死亡率は、2016年第1四半期までの1年間で1万人あたり11.4人だったのに対し、2017年第1四半期までの1年間では12.0人に上昇している。
連邦捜査局(FBI)によると、銃器による殺人も増えており、2015年の9,778人から2016年には11,004人にまで急増した。このような現状があるにもかかわらず、米国では、銃にまつわる科学的研究を推進しにくい環境にあるのが実態だ。アメリカ疾病管理予防センターでは、銃に関する研究活動への予算が、1996年以来、96%も削減され、総予算56億ドル(約6,330億円)のうちの10万ドル(約1,130万円)しか割り当てられていないという。
いわずもがな、国家には、国民の生命を守る義務がある。多くの人命を危機にさらしている銃と薬物の問題に、アメリカ政府がどのように向き合い、対処していくのか、今後の動向を見守りたい。