武装組織が人質1300人、インドネシア・パプア州で謎の村落占拠事件
ボイ・ラフリ(Boy Rafli)州警本部長は11月11日に武装集団のメンバーとして21人を指名手配したと発表。このうちリーダー格はサビヌス・ウェーカー(Sabinus Waker)という人物でこれまでに「殺人、銃の不法所持・不法発砲」容疑がある人物で、集団には類似の犯罪者が多く含まれている、としている。
パプア州警本部長だったこともある国家警察のティト・カルナフィアン(Tito Karnavian)本部長も「今回事件のあった一帯で金鉱山を無許可で採掘する労働者の中に武装グループが存在していることを当時確認していた」とわざわざコメントした。これは今回の事件がテロや独立運動とは無関係であることを強調する意図があるものとみられているが、一部マスコミからは「そんなグループを確認していたのならなぜその時に摘発しなかったのか」と逆に批判を受けている。
独立運動の一派、労働争議との見方も
占拠された村には武装集団の求めに応じる形でこれまでに外部から食料などコンテナ20個分が届けられており、人質からは「子供用のミルクを届けてほしい」などの要望がでているという。
パプア州は西パプア州とともにニューギニア島の西半分にあり、旧オランダ領から国連統治を経て1969年に帰属を問う住民投票が実施された。しかし自国領と主張するインドネシア軍の投票操作とその後の軍の侵攻でインドネシアへの併合が実質上決まったことを背景に独立を求める武装闘争が細々とではあるが現在も続いている。
独立運動の主体は「自由パプア運動(OPM)」という武装組織で、インドネシア警察、軍への散発的襲撃やパプア州南部で大規模な金、銅鉱山開発、採掘を続ける米資本「フリーポート社」関係者への襲撃事件などを起こしている。
こうした経緯から今回の人質事件も警察官襲撃が前段になっていることからOPMの一派の関与を指摘する報道も出ている。
もっともOPMは当局が封じ込めほぼ活動停止状態と主張してきたインドネシア治安当局にしてみれば、「OPMの活動は認めたくないところ」。それがために「犯罪者集団の犯行説を強調しているのではないか」(インドネシア人記者)との見方も出ている。
さらにフリーポート社の現地子会社でもある「フリーポートインドネシア」や関連する下請けの鉱山開発各社では最低賃金や労働環境を巡る労働争議も頻発している。争議の大半は州外からの労働者とパプア人労働者の待遇格差とされ、今回も人質の中に州外からの鉱山労働者が300人含まれていることから、労働問題が関連している可能性もあるという。