研究開発を加速する中国、足を引っ張るトランプ
私はこのとき、そのゾンビを葬り去るために最善を尽くしたつもりだ。具体的には、次のように主張した。テクノロジーは進化のペースが速く、特定のテクノロジーを守ろうとしてもすぐに時代遅れになってしまう。それに、アメリカが経済とテクノロジーで世界の先頭を走っているのは、経済と社会の変化を恐れず、大学と産業界が研究開発に取り組んできたからだ。
当時、アメリカで学んだ中国人大学院生の80%は修了後も帰国せずにアメリカにとどまり、経済と社会に計り知れない貢献をしていた。アメリカの経済力と軍事力の源である科学とテクノロジーの分野では、特にそれが顕著だった。
この傾向は、現在はさらに強まっている。アメリカの大学で学ぶ外国人学生の3分の1を中国人が占めており、その半分以上はアメリカにとどまるつもりでいるのだ。こうした人たちが次のグーグルや次のフェイスブックをつくるのだろう。
現在のアメリカと中国の政治を見ていると、このまま行けば、やがて誰もが中国製の電気自動車に乗る時代が現実になるように思える。もちろん、動力源は、中国の太陽光発電技術が生み出すことになる。
その時代が訪れたとき、アメリカが君臨する世界秩序「パックス・アメリカーナ」は、歴史の教科書の中にしか存在しなくなっているだろう。
<本誌2017年10月31日号掲載>
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