ミャンマー軍のロヒンギャ迫害 多数の女性にレイプの傷痕
「氷山の一角」
バングラディシュのウクヒア地区には、国連機関の支援のもとで同政府が運営する診療所が複数ある。その中心となる医療複合施設を率いるMisbah Uddin Ahmed医師は、女性医師の報告をもとに、レイプ被害者である女性19人の治療を行ったと語る。
「証拠としては、咬傷や膣の切傷などがある」とAhmed医師。9月14日だけでも、診療所の1つを訪れた6人の女性全員が、性的暴行を受けたと話していたという。「彼女ら全員が、やったのはミャンマー軍だと述べていた」
クツパロン難民キャンプに近い、これらの診療所の1つで働くIOM医師は、8月末にミャンマー国境を越えてきた女性が、少なくとも7人の兵士にレイプされたと語っていた、と証言する。
「彼女はひどく衰弱し、トラウマに苦しんでおり、診療所を訪れるのも辛かったと話していた」とこの医師は語った。「彼女は膣に裂傷があった」
この医師は、レイプされたと思われる女性19人のうち15人を治療したほか、身体的な暴行を受けた8人を診療したという。一部の患者には緊急避妊薬を投与し、エイズウイルス(HIV)感染リスクを低下させる処置と肝炎の予防接種を全員に行った。腕や背中のかみ傷、膣の切傷や裂傷、出血などの症状が見られたと同医師は語る。
コックスバザールの複数の援助機関がまとめた内部報告書には、8月28─31日の4日間だけで、49人に上る「性・ジェンダーに基づく暴力(SGBV)」による被害者が記録されている。SGBVは未遂を含むレイプ、性的虐待、精神的な虐待などを示す言葉であり、レイプ事件に関してのみ使われるという。上記以外の日に関して報告されたレイプ事件についてはデータ入手ができなかった。
援助機関による状況報告によれば、8月25日以降、350人以上がジェンダーに基づく暴力に関連する「救命治療」を受けているという。この報告書には、加害者についての言及はない。
コックスバザールで「国境なき医師団」の緊急医療コーディネーターを務めるケイト・ホワイト氏によれば、同医師団では8月25日以降、集団レイプと性的暴行を含む性・ジェンダーに基づく暴力の被害者を少なくとも23人治療したという。
「これは実際に発生しているであろう事例の氷山の一角にすぎない」とホワイト氏は言う。