最新記事

経済制裁

北朝鮮、4000人が働く世界最大級の美術工房 「アート」で外貨獲得へ

2017年10月12日(木)18時45分


白虎

ロイターは、アート収集家や美術史家、学者や北朝鮮アートを世界で売ってきた関係者など少なくとも30人に取材。その多くが、北朝鮮の絵画はニッチな市場であり、売り上げは北朝鮮が石炭や鉱物の輸出で得る収入に比べて、わずかな規模だと説明した。

だがそれでも、北朝鮮の外交官は、外貨を稼ぐためだけに、欧州で熱心に美術展を宣伝してきたという。

中国では、需要が大きく伸びている。

丹東は、鴨緑江越しに北朝鮮の生活を垣間見ることのできる人気の観光都市だ。毎朝、観光客が観光バスに乗ってやってきて、冷麺を食べ、北朝鮮女性の歌や踊りのショーを見学し、絵画を買っていく。

万寿台創作社以外にも、北朝鮮におけるほぼ全ての省庁や地方政府が、絵画スタジオを所有している、とライデン大講師で、北朝鮮アートを研究するKoen De Ceuster氏は言う。「国中にスタジオがある」

ほかに有名なのは白虎美術創作社と中央美術創作社だ。丹東では、白虎の大衆作品が最もよく売れていると、現地の関係者は話す。

白虎と取引したことのある複数のコレクターは、北朝鮮軍が運営主体だと指摘するが、ロイターは独自に確認できなかった。白虎が製作したプロパガンダポスターには、「核なき世界」を訴えるものもあった。

ロイターが訪問した丹東のスタジオは、2014年以降、500人以上の北朝鮮アーティストを受け入れてきたと、責任者のGai氏は言う。滞在期間は、6カ月から3年の間だという。

多くの丹東の画廊が、北朝鮮の画家を受け入れている。画廊スタッフは、世界から顧客があり、絵画には最高で10万ドル(1130万円)の値がついたことがあると振り返る。専門家も、時折数千万円規模で買われる作品があると指摘する。

売り上げの全てが北朝鮮政府に渡るわけではない。売値が、仕入れ価格の4、5倍になることもあると、丹東のディーラーの1人が明かした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中