北朝鮮、4000人が働く世界最大級の美術工房 「アート」で外貨獲得へ
白虎
ロイターは、アート収集家や美術史家、学者や北朝鮮アートを世界で売ってきた関係者など少なくとも30人に取材。その多くが、北朝鮮の絵画はニッチな市場であり、売り上げは北朝鮮が石炭や鉱物の輸出で得る収入に比べて、わずかな規模だと説明した。
だがそれでも、北朝鮮の外交官は、外貨を稼ぐためだけに、欧州で熱心に美術展を宣伝してきたという。
中国では、需要が大きく伸びている。
丹東は、鴨緑江越しに北朝鮮の生活を垣間見ることのできる人気の観光都市だ。毎朝、観光客が観光バスに乗ってやってきて、冷麺を食べ、北朝鮮女性の歌や踊りのショーを見学し、絵画を買っていく。
万寿台創作社以外にも、北朝鮮におけるほぼ全ての省庁や地方政府が、絵画スタジオを所有している、とライデン大講師で、北朝鮮アートを研究するKoen De Ceuster氏は言う。「国中にスタジオがある」
ほかに有名なのは白虎美術創作社と中央美術創作社だ。丹東では、白虎の大衆作品が最もよく売れていると、現地の関係者は話す。
白虎と取引したことのある複数のコレクターは、北朝鮮軍が運営主体だと指摘するが、ロイターは独自に確認できなかった。白虎が製作したプロパガンダポスターには、「核なき世界」を訴えるものもあった。
ロイターが訪問した丹東のスタジオは、2014年以降、500人以上の北朝鮮アーティストを受け入れてきたと、責任者のGai氏は言う。滞在期間は、6カ月から3年の間だという。
多くの丹東の画廊が、北朝鮮の画家を受け入れている。画廊スタッフは、世界から顧客があり、絵画には最高で10万ドル(1130万円)の値がついたことがあると振り返る。専門家も、時折数千万円規模で買われる作品があると指摘する。
売り上げの全てが北朝鮮政府に渡るわけではない。売値が、仕入れ価格の4、5倍になることもあると、丹東のディーラーの1人が明かした。